WANをCatoクラウドに移行するには?

本記事は TechHarmony Advent Calendar 12/12付の記事です。

昨日に引き続き、Catoクラウドについてです。どうぞお付き合いください。

現在稼働中のWANをCatoクラウドに移行しようとしたとき、どのような点に考慮が必要でしょうか。またどういった順序で進めるべきでしょうか。

今年もいくつかの移行をご支援した振り返りとして、移行の進め方の例をご紹介します。

一般的な閉域網WAN構成と移行後イメージ

現状のWAN構成として、以下のような構成で運用されている例は多いかと存じます。

  • 拠点を閉域WANサービスで接続
  • データセンタに社内システムを集約
  • インターネット向けの通信は、データセンタに設定したセキュリティアプライアンスを通って、データセンタのインターネット回線から出ていく
  • データセンタにリモートアクセスシステムを設置し、社外から社内のシステムへアクセスする
  • データセンタまたは閉域WANから、SaaSやパブリッククラウドへのアクセス経路がある

このWAN構成のイメージが下図の左側、これをCatoクラウドに移行した場合の例が右側です。

データセンタでのボトルネックを解消し、セキュリティアプライアンスをCatoクラウドのセキュリティ機能に置き換え、シンプル化するイメージです。

移行フェーズの例

では、Catoクラウドの移行はどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。おおよその流れは以下です。

  1. 現状構成の調査
  2. 移行要件の整理
  3. 移行設計
  4. 移行の実施

それぞれのフェーズでの実施内容をご紹介します。

1. 現状構成の調査

ネットワークを切り替えるにあたり、まずは現状の構成がどうなっているかを整理する必要があります。

具体的には、以下のような情報を確認し、最新化します。

  • ネットワーク全体のIPアドレス設計
  • 通信フロー
  • ルーティング設計 (使用しているルーティングプロトコル、拠点間通信の制限有無、例外ルールの有無等)
  • データセンター内の物理・論理構成、回線情報
  • 各拠点の物理・論理構成、回線情報
  • リモートアクセスシステムの利用者数、アクセス制限

これらの情報に不明瞭な箇所があると、移行時に考慮漏れが起こってしまうことがあるため、情報が最新でない場合には、稼働中の機器のConfig確認や現地の調査を行います。

2. 移行要件の整理

Catoクラウドへの移行にあたり、支障となる点や、特別な考慮が必要な点がないかを検討します。多くの場合は、これらを確認するためにPoCを実施します。

また、あわせて移行後の構成を検討します。

移行要件の確認ポイント

フェーズ1で調査した現状の構成情報を用いて、以下のような点を確認していきます。

  • IPアドレス体系はそのまま移行できるか。 拠点間での重複や、Catoの管理アドレス(10.254.254.0/24)の利用がないか。
    ※あった場合移行設計時に考慮が必要になるため
  • リモートアクセスをCatoに移行できるか。現状のリモートアクセス装置でないと実現できない、固有の通信要件がないか。
  • 拠点間通信・Internet向け通信において特殊な経路・要件がないか。
  • 外部向けの公開サーバなど、Internetから内部向けの通信があるか。ある場合、その通信の宛先となるグローバルIPアドレスは変更が可能か。
    ※Catoに移行するとグローバルIPアドレスが変更されるため
  • 現行のセキュリティアプライアンスとCatoセキュリティ機能を比較し、対応できない機能がないか。あった場合にはその機能の必要性や代替手段を検討する。

移行後構成の検討ポイント

同じく、現状の構成情報をもとに、移行後の構成を検討していきます。

  • 各拠点のCatoクラウドへの接続を冗長化するか、シングル構成とするか。
  • 各拠点の接続帯域の検討。
  • 各拠点で利用する回線の選定、手配。
    ※申込みから開通まで2~3ヶ月かかるため早めの手配が必要です
  • モバイル接続ユーザ数の検討。
  • モバイル接続ユーザの登録・認証方法・接続制限の検討。
  • パブリッククラウド(AWS/Azure/GCP等)がある場合、Catoクラウドへの接続方法の検討。

拠点間通信の見直しについて

なお、閉域ネットワークからCatoクラウドへの移行は、境界型防御からゼロトラストモデルへの移行でもあり、セキュリティ環境を見直す絶好の機会です。

境界型防御は社内ネットワーク=安全とするモデルのため、拠点間の通信に制限をかけていない場合が多いですが、ゼロトラストにおいてはすべての通信を信頼せず、許可すべき通信のみを許可することが推奨されます。

Catoクラウドでは「WAN Firewall」機能にて、拠点間やユーザ間、またユーザと拠点間の通信の制御を簡単に実現できます。また、ルール内で、アプリケーションやサービスの指定や、OS等デバイス条件の指定も可能ですので、許可すべき通信だけを細かに指定して許可し、ネットワーク内のセキュリティを高めることが可能です。

このフェーズにて、ネットワーク内通信の厳格化を検討することをおすすめしております。

WAN Firewallの機能については、以下の記事もご参照ください。

3. 移行設計

移行後の構成が描けましたら、続いて実際の移行方法を考えていきます。

移行Stepの検討

多くの場合、全拠点の一斉移行は難しく、各拠点の都合にあわせて順次移行していくことになります。

順次移行は、データセンター等、主要なシステムがある拠点にまずCato Socketを設置し、その拠点を中継してCatoクラウドと既存網の間を相互通信させることにより実現します。

以下は移行Stepの一例です。

  • Step0 主要なシステムのある拠点(データセンタ等)にCato Socketを設置し、限定したユーザで導入テストを行う。
    ※このStep0をPoCとして実施する場合が多いです
  • Step1 リモートユーザの接続をCatoクラウドに切り替える。 

  • Step2 パイロット拠点をCatoクラウドに切り替える。
  • Step3 各拠点を順次Catoクラウドに切り替えていく。
  • Step4 パブリッククラウド(AWS/Azure等)をCatoクラウド経由の接続に変更する。
    ※Catoへ切り替え済みの拠点/ユーザとの通信効率を重視する場合には、より早い段階で移行します

  • Step5 不要となった回線・機器を廃止する。

既存網とCatoクラウドのルーティング方法

前述のとおり、拠点の順次移行を行うには、中継拠点を設け、既存網とCatoクラウドを相互ルーティングさせる必要があります。

移行中のルーティングをどのように制御するかは移行前の構成によりますが、随時手動でルートを設定するか、ダイナミックルーティングで制御するかのどちらかとなります。

CatoクラウドはルーティングプロトコルとしてBGPのみに対応しております。このため中継拠点のルータ・L3SW等がBGPに対応していれば、既存網とCatoクラウド間のルーティングを動的に制御することが可能です。

以下は移行時のルーティングの例です。BGPが利用できる場合には、移行時の手間を減らすために、この方法がおすすめです。

  • 前提として、既存網のネットワークがダイナミックルーティング(図の例はOSPF)で制御されている
  • データセンター内のL3SWにてOSPFとBGP間のルート再配布を行い、既存網とCatoクラウド間で経路交換する
  • 拠点が既存網を外れ、Catoクラウドへ接続されると、自動でCatoクラウド側から経路広報される

なお、この方法がとれない場合(BGP対応機器がない、元々ダイナミックルーティングをしていない等)には、拠点を移行するたびに手動でルートを変更する必要があります。

移行手順の作成

移行Stepを決めた後、続いて各Stepの移行作業の詳細を詰めていきます。特にStep3の拠点移行については、現状構成の調査や移行要件の整理であきらかになった情報に注意し、移行手順を作成します。

切り替え時の作業項目、障害試験内容、正常性確認項目等を作成し、実施日程を調整します。

4. 移行の実施

Catoクラウドの機能設定

移行を開始する前に、Catoクラウドの各種機能を移行要件に沿って設定し、ユーザが本番利用して問題ない状況にしておきます。

また、忘れがちな事前作業として、端末へのルート認証局証明書の導入があります。拠点に据え置きのデスクトップ端末やサーバなど、Catoクライアントを導入しない端末には、Catoのルート認証局証明書の導入が必要です。詳細は下記の記事もご参照ください。

移行の実施

準備ができましたら、計画に沿って、実際にStepごとの移行を実施していきます。

最後に

Catoクラウドへの移行について、駆け足でご説明しました。あらためて流れを振り返りますと、以下のようなフェーズです。記事ではご説明しきれない内容も多いのですが、概要として参考にしていただけますと幸いです。

  1. 現状構成の調査
  2. 移行要件の整理
  3. 移行設計
  4. 移行の実施

SCSKでは、各フェーズにてお客様のご要望に合わせた移行ご支援を行っております。1~4すべてをお任せいただくことも可能ですし、1~3のみご支援し、4の移行作業はお客様にて実施される例もございます。

移行にかかる期間は、拠点数や構成の複雑さに左右されますが、フェーズ1~3を3ヶ月間で実施させていただくことが多いです。フェーズ4の期間は、拠点数やスケジュールによりまちまちです。

Catoクラウドはもちろん、ネットワーク・インフラ全般に精通したエンジニアが、お客様ネットワーク構成にあわせた最適な移行をご支援します。ぜひご相談ください。

著者について
Hitomi Watanabe

道産子ネットワークエンジニアです。
40%キーボードの愛好家です。

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