本記事は TechHarmony Advent Calendar 2024 12/6付の記事です。 |
本記事では、2024年11月3日にリリースされた、Catoクラウドの新しいオプションである「Digital Experience Monitoring」をご紹介します。
Experience Monitoringとは、ユーザがWebサイトやSaaSアプリケーションを利用する際に、通信が遅くないか、どのくらい快適に利用できているかを可視化する機能です。
もともとCatoクラウドではExperience Monitoringの一部機能をトライアルとして提供していましたが、2024年11月3日から機能拡充し、有償オプションにリニューアルしています。このオプションサービス名が「Digital Experience Monitoring」(以下DEM)です。
なお、リニューアル前のExperience Monitoringについては、以下の記事でご紹介しています。あわせてご参照ください。
DEMで何ができるの?
以前のExperience Monitoringの機能はすべて利用できる他、さらに以下3機能が追加されています。
- Device Monitoring
ユーザ環境について、かなり詳細な情報が取れるようになりました。 - Synthetic Probe Monitoring
通信品質を判断するための通信対象を、柔軟にカスタマイズ指定できるようになりました。 - XDRでのExperience Anomaly検知
SiteのExperienceの急激な変化を、XDR Storyとして検知・通知できるようになりました。
これにより、「ユーザが快適に業務アプリを使えているかのモニタリング」がより細かくできるようになり、また問題発生時の原因箇所の特定がより簡単になりました。
本記事では、これらの新機能を中心に、できることや活用方法をご紹介していきます。従来の機能については、前述のExperience Monitoringの記事をご参照ください。
新機能1) Device Monitoringとは?
Device Monitoringは、Catoクライアント(※)をインストールしているモバイルユーザの環境を、詳しく確認できる機能です。画面を見るとその機能が一目瞭然です。
※2024年11月現在、WindowsとMacOSクライアントのみの機能です。
特定の1ユーザのExperience Monitoring画面を例にご紹介します。
ユーザごとの画面は上記のようになっています。
① | ユーザ名、接続PoP、利用デバイス名、OS、クライアントのバージョン、接続ISPなどの基本情報 |
② | 指定期間内のユーザのExperienceの状況 |
③ | 端末からアプリケーションまでの間で、どの箇所に問題がありそうかの分析 |
④ | ③の各項目の詳細情報 |
上記スクリーンショットの例を見ると、端末、Wi-Fi、LANの状況は緑表示で良好そうで、その先のLast Mile(回線・プロバイダ)やApplication側の通信は黄色表示の普通、全体としてFair(普通)という状況です。
④の各項目では、以下の詳細情報が確認可能です。アイコンと詳細情報は、以下の図のように対応しています。
項目名 | 確認できる内容 | アイコンがPoor(赤色)のときに疑われる事象 |
Device Hardware | Catoクライアントが収集した、その端末のCPU使用率、Memory使用率 | 端末自体の負荷が高く、動作が遅くなっている可能性があります。端末の状況を確認します。 |
Wi-Fi | 端末が接続している無線アクセスポイントの電波強度 | 利用環境のWi-Fiの電波が弱い可能性があります。 |
LAN Gateway | 端末が接続しているLAN内のゲートウェイへのPacket Loss、Distance | LAN内で、通信混雑・不安定などが発生している可能性があります。 |
Last Mile | 端末からCato PoPを通らずにInternetへ出る場合のPacket Loss、Distance、またCatoクライアントのTunnel接続時間 | インターネット接続環境の通信品質が良くない可能性があります。 |
Application Performance | Cato PoPを経由してアプリケーションへ接続する際の応答時間 また、設定した「Synthetic Probe Monitoring(※)」の観測状況 ※次項にてご紹介します |
‐ |
Applications | アプリケーションごとの応答時間や接続状況(Good/Fair/Poor) | 特定のアプリケーションだけがPoorの場合、そのアプリケーションの反応が良くなかったり、ご利用地域からのサーバまでの距離が遠い可能性などがあります。 |
各項目を確認することで、例えばユーザから「特定アプリへの通信が遅い」と申告があった際に、何が原因になっているのかのアタリを簡単につけることができます。これは便利ですね!
新機能2) Synthetic Probe Monitoringとは?
Application Performanceで通信品質を測定する際の、通信先となる対象を、柔軟に設定できる機能です。
DEMオプションを契約している場合のみ、Cato管理画面に「Experience Monitoring Probes」という設定項目が表示されます。
デフォルトの状態では、測定対象(Probe)として”catonetworks.comへのICMP通信”が定義されています。これは、全Site・全Userについて「catonetworks.comへのICMP応答によって、Application Performanceを測定することとする」という設定です。
ですが、ユーザにとっては、catonetworks.comへのICMPが早くても遅くても、業務にはおそらく影響しないので、ユーザの通信体感を測る目的には合っていなそうです。
そこで、ここのProbeを業務でよく使う通信先・通信内容に設定します。例えば「outlook.office.comへのHTTPS接続」(※)などです。ProbeはInternetとWANの両方が設定できますので、業務でよく使うSaaSと、オンプレシステムの2つを登録しておくと、InternetとWAN両方の通信状況が可視化できて良いかと思います。
※ProbeはICMPの他、HTTP、HTTPS、DNS、TCPが指定できます。
また、設定したProbeは、指定したSiteやユーザ、またグループにのみ適用することも可能です。設定例として、国・エリアによって使うアプリが違う場合には、それぞれ異なるProbeを指定するといったことができます。
ユーザの利用体感に近いデータを測定できるよう、そのユーザが業務でよく使うアプリケーションをProbeとして設定するのがポイントです。
Device MonitoringとSynthetic Probe Monitoringで何ができるの?
Probeを設定すると、前述の「Application Performance」にて、指定したProbeへの通信状況のグラフが表示されます。
以下の例は、Internet向けに「teams.microsoft.com」を指定し、WAN向けには何も指定していない状態です。
見ると、TeamsへのPacket lossが100%になっているような時間帯があり、一時的にTeams通信に問題が出ていたことが予想されます。その時間帯の他の監視項目(Device Hardware、Wi-Fi、LAN Gateway、Last Mile)を見てみて、特に問題が無いようであれば、Teams側で何らかの問題が発生していたかもしれません。
用途としては、例えばユーザから「最近社内システムへの通信が遅い」という申告があった際に、Synthetic Probe Monitoringのグラフを見て、以前と現在とで変化があるか、他のユーザはどうなのかといった情報を確認し、問題の切り分け材料にできるかと思います。
新機能3) XDRでのExperience Anomaly検知
ここまでご紹介したExperience分析は、モバイルユーザだけでなく、Site内にいるユーザや、Site(拠点)自体に対しても可能です。
このうち、SiteのExperienceについては、普段と異なる、急激なレスポンス悪化等があったときに、Cato XDRのStoryとして検出し、管理者へ通知することが可能になりました。拠点の通信状況の監視手段としてぜひ活用いただきたいです。
(余談)Good/Fair/Poorをどう判定しているの?
ところで、Experience Monitoringの Good/Fair/Poor はどういった基準で判断されているのでしょうか。
Catoによると、すべてのCatoユーザが生成した実際のトラフィックから、AIでベースライン(期待される基準)を規定し、そのベースラインよりも良いか、同じくらいか、悪いかで判断しているそうです。ベースラインは動的に変化するため、同じようなExperienceでも、日によって判定が違うということはあるようです。
決まったしきい値があるというわけではないので、問題切り分け時の参考情報のひとつとして見ておくのがよいかなと思います。
まとめ
以上、「Digital Experience Monitoring」の新機能についてご紹介しました。
Experience Monitoringは、個々のユーザが快適に業務を行えているかを可視化できます。検証している我々も「Catoクライアントを入れているだけで、ここまでユーザの状況がわかっちゃうのか!」と驚きました。ネットワーク管理者の強い味方になる機能ですので、ぜひ導入をご検討ください。
機能の詳細は、以下のCato Knowledge Baseも合わせてご参照いただけますと幸いです。