Catoクラウドの機能一覧

今回は、Catoクラウドの機能を整理してご紹介したいと思います。
もちろん、すべての機能をブログに記載するのは難しいため、Catoクラウドに興味を持たれた方に向けて「現在のネットワークで使用している機能がCatoクラウドに移行しても使えるのか?」という視点から整理してみました。

また、CatoクラウドはSD-WANを利用しており、すべての設定はWeb管理コンソール(CMA)で行うため、オンプレミスの機器で構築されたネットワークと単純に比較することはできません。しかし、より具体的なイメージを持っていただくために、「拠点ネットワーク」「ネットワーク全体」「リモート接続」「セキュリティ」「運用」の5つのカテゴリに分類して説明します。少しでも「なるほど、Catoってこんな感じなんだ」と感じていただければ幸いです。

拠点ネットワーク編

まずはCato Socket周辺の機能です。ここでは拠点にルータを置いて回線と接続した場面を想定しています。Catoに切り替える場合はこのルータをSocketに入れ替える事になります。尚、Socketはサブスクリプションでの提供となります。

機能 対応有無 補足事項
Socketポート数 シリーズ毎に以下のポート数(1000baseT)があります。
X1500:1GbE×4
X1600:2.5GbE×4、1GbE(RJ45/SFP)×2、10G SFP×2
X1700:1GbE×8(10Gカード別搭載)
ラックマウント X1500:マウントキット別売り
X1600:マウントキット別売り
X1700:ラックマウントレール(標準)
HA構成 Act/SbyでのHA構成が可能です。lanポート同士をVRRPで制御してます。
回線冗長 1台のSocketに複数回線を接続してAct/Actでの利用や、回線毎に重みづけを行い負荷分散させる事も可能です。
回線接続 SocketのWAN接続は「DHCP・Static・PPPoE」の3つをサポートしています。デフォルトがDHCPなので、上位ルータからSocket wanポートのアドレスをDHCPで払い出す環境であれば完全なゼロタッチプロビジョニングが可能です。因みにSocketの上位機器がIPマスカレードでNATしている環境でも問題ありません。
ブリッジ接続 wanポートとlanポートが同じセグメントでも問題ありませんが、ワンアーム接続は不可です。
IPv6回線接続 × Catoは今のところIPv6には対応していませんが、Socktの上位ルータがIPv4に変換する事でIPv6回線を使用する事は可能です。尚、最近のCatoのロードマップにはIPv6対応が追加されました。
IPsec接続 Socketを使用せずオンプレルータとCatoクラウドをIPsecで接続できます。但しSocket利用時に比べると利用できる機能は制限されます。
スタティックルート LAN内の複数セグメント宛てにスタティックルート設定が可能です。
BGP LAN側のBGP機器とSocket間でBGPによるルート交換が可能です。
OSPF・RIP他 × Catoではサポートしていません。
タグ付きVLAN LAN側の接続機器と802.1QでTrunk接続が可能です。
またSocketの物理ポート毎にVLANを分けて、各L2スイッチと接続できます。
VLAN間アクセスリスト CatoのLANファイヤーウォールでセグメント間のパケットフィルタリングが可能です。その場合Socketで折り返しとなるので回線側に不要なトラフィックを流す事を回避できます。
DHCP Socket配下のPCなどにアドレスを払い出すイメージです。Socketで設定したVLAN毎にDHCPが利用できます。但し、除外設定はないので分割したアドレスレンジを設定する事はできません。
DHCPリレー 問題なく使えます。

全体ネットワーク編

次にネットワーク全体の機能です。SD-WANとしてもっと細かい機能や設定は沢山あるのですが、お客様からのお問い合わせやその回答の中で話にあがる機能をピックアップしてみました。

機能 対応有無 補足事項
DNSキャッシュサーバ Catoが提供するDNSサーバがあります。このサーバを参照するのが推奨です。
社内サーバの名前解決 CatoのDNSサーバのフォワーディング設定で、フォワード先に社内DNSサーバを指定する事で社内サーバの名前解決が可能となります。
固定グローバルアドレス Catoからインターネットに出ていく送信元アドレスを、お客様固有のグローバルアドレスに設定する事ができます。M365などのIPアドレスによるアクセス制限用として利用できます。尚、固定グローバルアドレスを使用しない通信は、Catoのランダムなアドレスでインターネットに出ていきます。
QoS(帯域制御) プライオリティ毎に帯域を占める割合(%)を設定し、常時その割合に制限するか?混雑時だけ制限するか?が選択できます。例えばWindows Update通信は常に帯域の10%にして業務通信に影響を与えない様にするなどの事例があります。
QoS(優先制御) プライオリティを各通信に割り当てる事で輻輳時の優先制御を設定できます。小さい値が優先度高になるので、Zoom会議はプライオリティ10、GCP宛て通信は20、通常のインターネット通信は255にしておけば、ネットワーク混雑時もWeb会議は安定して利用できます。
ルートピア これはSD-WANならではの機能ですが、インターネットへ出ていくPoPを指定する事ができます。例えばOCI東京リージョンに構築したシステムにベトナム拠点からアクセスする際、その通信の出口を東京PoPを指すればホーチミンPoPからCatoバックボーン経由で東京PoPから接続するので、低遅延で安定した通信が可能になります。
バックホーリング これもSD-WANならではの機能です。通常インターネット接続はCato PoPから出ていきますが、ある通信だけはCatoに接続しているデータセンター経由でインターネットに出したいという要件にも対応可能です。このケースはIPアドレスの問題やCato移行期間中の措置といたたケースが多いようですが、どうしてもホップ数が増えるのでパフォーマンスは落ちると思います。
NAT Catoに接続する拠点アドレスが重複する場合、サブネットごと別アドレスに変換する事ができます。
ダイレクトコネクト AWS・Azure・GCP・OCIとはCatoの「クラウド・インターコネクト」で専用接続が可能です。インターネット接続より低遅延/高帯域での通信が可能です。
ローカルブレークアウト いくつか方法はありますが、いずれも宛先はIPアドレス指定での設定しかできません。例としては、ドメイン指定でgoogle.comはCatoを通さないという設定は不可です。SASEのポリシーは「全ての通信をチェックする」というものなのでブレークアウトはあくまで例外設定という位置づけと思っていたのですが、最近のロードマップにはドメイン指定をサポートするという話がありました。
公開サーバ 固定グローバルアドレスにアクセスしたトラフィックをNAT及びポート変換して、内部にあるサーバに転送させる事ができます。

モバイル接続編

次はモバイルアクセスです。従来のネットワークでは、データセンターにVPN装置を設置し、PCにVPNソフトをインストールして自宅や外出先から社内システムに接続する場面を想定しています。Catoの場合も同様で「Cato Client」をPCやスマートデバイスにインストールしてCatoクラウドにVPN接続します。尚、CatoではこのCato Clientで接続したユーザーを「SDPユーザー」と呼びます。

話はそれますが、これまで、オンプレミスのVPN装置を経由して社内システムに侵入され、ランサムウェアなどの被害に遭うケースが多数発生していました。その主な原因は、パッチの適用遅れや未適用です。脆弱性が発見されるとメーカーから修正パッチが配布されますが、そもそも脆弱性をチェックしていたのか?という点や、チェックをしていても、いざパッチを適用する際には業務時間外での作業となり、運用管理者に大きな負荷がかかっていたと思います。これは、クラウド利用時とは比較にならないほどの負担です。

機能 対応有無 補足事項
サイレント・インストール Cato Clientのインストールファイルをダウンロード後、コマンドの実行でインストールが可能です。グループポリシーを使用してインストールされているお客様の例があります。
インストール時の管理者権限 Cato Clientのインストール時は管理者権限が必要です。その後の自動アップグレード時は必要ありません。
SDPユーザーのグルーピング 部署やグループ会社毎にグルーピングし、作成したグループをファイヤーウォールやネットワークルールのオブジェクトに設定する事ができます。
アンインストール禁止 × 現状はユーザーによるアンインストールができてしまいます。「アンインストールすると結局業務ができませんよ」というスタンスのようです。ただし少し前のロードマップに「2024年中に実装予定」との内容が追加されていました。
バージョンアップ制御 Cato Clientのバージョンアップはお客様の環境に合わせた制御が可能です。バージョンアップ操作を全てユーザーやらせるか、ダウンロードまで自動を行ってユーザーの都合のいいタイミングでアップデートさせるか、サイレントアップデートかを選択できます。
ユーザー割り当てアドレス SDPユーザー用のPoolアドレスレンジを設定しておき、接続にしたユーザーにはその中からアドレスを割り当てCatoに接続させます。また特定のSDPユーザーにはアドレス固定にする事も可能です。
オンプレADとのLDAP同期 Catoからの到達性があるADサーバのOUやセキュリティグループのユーザー情報をCatoに取り込む事ができます。ユーザー管理はAD側で一元管理できます。
SCIMでのユーザープロビジョニング 連携しているIdPサービスからユーザー情報をCatoに取り込む事ができます。ユーザー管理はIdPサービス側で一元管理が可能です。
シングルサインオン 現在は計6つのIdpと連携しシングルサインオンが可能です。
ユーザー識別 AD及びEntra IDとユーザー同期している場合、Catoの中でもユーザー名で識別が可能です。ログ上IPアドレスだけの表示だと誰なのか?確認するのが手間ですが、ユーザー名で表示されるので一目でどのユーザーがどんな通信をしているのかが判別できます。
デバイス証明書認証 お客様で発行されたルートCA証明書をCatoクラウドにアップロードし、SDPユーザー端末にデバイス証明書を配布しておけば、証明書によるデバイス認証が可能となります。
デバイスポスチャ SDPユーザー端末の環境やステータスをチェックしてCatoへの接続を制限します。例えば会社指定のアンチウィルスソフトのバージョンいくつ以上が入っていて、且つデバイス証明書が入っている端末はCato接続を許可するといった事ができるので、BYOD利用の制限が可能となります。
スプリット・トンネル 特定の宛先IPアドレスや送信元IPアドレスはCatoトンネルから除外する設定です。SDPユーザー端末からCatoに接続してない複合機を利用する場合など、複合機のIPアドレスを除外する事で利用が可能となります。
IPv6接続 2024年8月に対応が可能になりましたが、利用するISPに条件があるようです。

セキュリティ編

次にセキュリティです。これまでも、データセンターに各種オンプレミス機器を積み重ねたり、各セキュリティサービスを契約することで、一通りのセキュリティ機能を実装することは可能でした。しかし、各機器やサービスはそれぞれ独自の仕様であり、ユーザーインターフェースも異なるため、各機能を習得するのが大変です。また、メーカーが異なるため、問い合わせも保守更新もそれぞれ別々に行わなければなりませんでした。Catoでは、必要なセキュリティライセンスを購入していただければ、あとは管理コンソール(CMA)で設定を行うだけで済みます。さらに、各セキュリティオプションのログもすべてCMAで確認できるため、運用管理にかかる工数を大幅に削減できるでしょう。

機能 対応有無 補足事項
インターネット・ファイヤーウォール インターネット通信を制御するファイヤーウォールです。レイヤ7でのフィルタリングが可能です。
URLフィルタリング インターネット・ファイヤーウォールで対応しています。他製品やサービスと同様、通信禁止になりそうなジャンルのカテゴリが用意されており、カテゴリ単位でブロック・プロンプト・許可が設定できます。またいつくかのカテゴリはデフォルトでブロック設定がされています。
WANファイヤーウォール Catoクラウド内の拠点間通信やSDPユーザー~拠点間通信用を制御します。
LANファイヤーウォール 前述の「拠点ネットワーク編」に記載した「VLAN間アクセスリスト」です。
TLSインスペクション インターネットのHTTPSの暗号化通信を、復号化>セキュリティチェック>再暗号化する機能です。これを有効にしないと以降のセキュリティは機能しません。またこの動作を行うためにCatoに接続する各デバイスにはCatoの証明書をインストールする必要があります。インストールできないデバイスやTLSインスペクションで通信が阻害されるサイトはBypassで逃がす事になります。
アンチマルウェア シグネチャベースのアンチマルウェア機能です。
Threat Preventionというオプションライセンスが必要です。
ネクストジェネレーション・アンチマルウェア(NGAM) 機械学習を用いた次世代のアンチマルウェア機能です。
Threat Preventionというオプションライセンスが必要です。
IPS 所謂IPS機能です。
Threat Preventionというオプションライセンスが必要です。
コンテンツ制限 本機能を有効にすると、インターネット検索エンジンと YouTube のコンテンツ検索時に適切なセーフサーチ設定が適用され、露骨な表現を含む結果がすべて削除されます。
CASB ユーザーのSaaSやアプリケーション利用を可視化し制御できます。シャドウIT対策もCASBの領域です。また「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン(令和5年度版)」にもCASB導入が推奨されており、今後はスタンダードなセキュリティ機能になるのではと考えられます。
CASBのオプションライセンスが必要です。
DNSプロテクション DNSで名前解決する時点で疑わしいドメインや公開されて日の浅いドメインをブロックする機能です。
CASBのオプションライセンスが必要です。
DLP 機密情報や重要データの紛失や情報漏洩を防ぐ機能です。「Confidential」の文字が入ったファイルやマイナンバー情報のアップロードをブロックします。
CASBおよびDLPのオプションライセンスが必要です。
RBI Webブラウザの分離機能です。本機能を有効にすると疑わしいサイトへのアクセス時にはCatoのブラウザが代理アクセスして、お客様のPCへの感染ファイルのダウンロードを防ぐ事ができます。
RBIのオプションライセンスが必要です。
Sandbox × 隔離された環境で危険性のあるソフトウェアの実行し、実環境には影響を及ぼさないような機能はサポートしていません。
SaaS Security API ユーザーがCatoを経由せず直接アクセスするクラウドでの操作を監視し、設定したルールの違反状況などを可視化する事ができます。
SaaS Security APIのオプションライセンスが必要です。
Endpoint Protection Platform (EPP) 所謂EPPでマルウェアの検出と駆除を行います。最大の特徴はEPPが検知するログもCatoコンソールで管理され、他のセキュリティ機能で検知したログを合わせて総合的な分析ができる点です。この分析とレポートは後述するXDRの機能となります。EPPのオプションライセンスが必要です。
Endpoint Detection and Response (EDR) × EDRは提供していません。但しその他セキュリティ機能(FirewallやNGAM、IPSなど)との組み合わせによるXDRの提供でよりトータルな分析・追跡を行っています。
XDR Cato上の様々なログを統合し総合的に分析したインシデント情報を提供します。インシデントは重要度でスコアリングがされますので、クリティカルなものを検知(通知も可能!)したら対応を行い、対応が済めばクローズしていくといサイクルで運用する事が可能になります。インシデントはドリルダウンしていくと発生要因や対策が提示されます。またXDRにはThreat Preventionのログの対象としたXDR Core(無償)と、イベントとトラフィックログにもとづく攻撃、通常とは違う振る舞いの検出を加えたXDR Proの2つがあります。

運用編

最後に運用編なのですが、こはシンプルな表にまとめるのが難しいため、内容をかなり省略させていただきました。Catoの料金体系は「接続帯域ライセンス」「Socket台数」「SDPユーザーライセンス数」「オプションライセンス」で構成されていますが、通知機能や通信の可視化、脅威分析などの多彩な運用機能は、すべて各ライセンス料金に含まれているため、非常にお得感があるのではないでしょうか。また、ログの形式や検索機能も見やすいとお客様に好評であり、Catoの導入により、運用レベルの向上と対応工数の削減が見込まれると思います。

機能 対応有無 補足事項
管理コンソールの日本語表示 英語・日本語含め、2024年8月現在では11の言語に切り替えが可能です。
アラート通知 EmailやWebhook、Slackに通知先を指定しておけば、各種システム通知・Socketの切断・セキュリティブロック通知などが可能です。
通信状況モニタリング ネットワークレイヤの状況はもちろん、利用アプリの状況、個々の通信の詳細から俯瞰的な視点から見た全体の傾向、各セキュリティ機能の活動状況、脅威ダッシュボードでの分析結果など、さまざまな角度から必要十分な情報を得ることができます。
SaaS・アプリケーションのスコアリング 通信先となるSaaS・アプリケーションはCato独自のスコアリングがされており、お客様の利用状況とセキュリティ診断結果を常に確認できます。
監査ログの保存 Catoコンソールの操作ログが保持されています。
自動設定チェック お客様が行うネットワーク設定やセキュリティ設定について、ベストプラクティスとのGAPを提示してくれます。多くの機能を使用すれば設定量も増え管理が大変ですが、本機能を活用する事で一定水準の品質が保たれるかと思います。
障害・メンテナンス情報の公開 Catoが提供するWebサイトにて全世界のPoPの障害情報・メンテナンス情報を確認する事ができます。また日本のPoPに関する情報をEmailやWebhook、Slackなどで受信する事も可能です。
ログの外部保存 APIによりCatoのログを外部ストレージなどに転送・保存する事が可能です。但しCatoの管理コンソールに戻す事はできません。
Catoサポートへの問い合わせ 英語にはなりますが、Catoサポートに直接問い合わせする事が可能です。尚、SCSKではこれを日本語で受付け問い合わせ代行するサービスをご提供しています。

さいごに

Catoは新しい機能やより利便性の高い機能が日々リリースされています。今回一旦まとめはしたものの、この先仕様が変わったりする可能性は大いにあり得ますので、正確な情報はCatoナレッジサイトでご確認いただくかお問い合わせいただくようお願いします。

著者について
takao.haruta

これまで数多くのお客様ネットワークについて提案から運用まで携わってきたネットワークおやじです。これまでの経験をもとにCatoクラウドに関する情報を発信していきます。

takao.harutaをフォローする

クラウドに強いによるエンジニアブログです。

SCSKでは、自社クラウドと3大メガクラウドの強みを活かし、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドのソリューションを展開しています。業界の深い理解をもとに、お客様の業務要件に最適なアーキテクチャをご提案いたします。サービスサイトでは、お客様のDX推進をワンストップで支援するサービスの詳細や導入事例を紹介しています。

Cato Cloudクラウドクラウドセキュリティソリューション
シェアする
タイトルとURLをコピーしました