こんにちは、SCSKの前田です。
私が携わったLifeKeeperの案件で導入を行ったARKについて紹介をかねてお話したいと思います。
今回は、NFS/HULFT 編と言うことで、Linux 等で利用されるファイル共有システムとマルチプラットフォームに対応したファイル転送ソフトを簡単に冗長化するための ARK の導入事例について、Linux 版をベースにご紹介していきます。
おさらい
LifeKeeperのARKについて、おさらいしたいと思います。
ARK とは、Application Recovery Kits の略で、LifeKeeper が特定のアプリケーション(オープンソースソフトウェアや商用アプリケーション)を容易にリソースとして組み込むことが可能になる製品です。
ARK による、アプリケーションのリソースへの組み込みはウィザード形式(GUI上で設定)で作業が可能となり、ARK には、アプリケーションを操作(起動・停止・監視・再起動)するための4つのスクリプトがあらかじめ準備されているため、スクリプトを設計・作成するための開発工数の削減や人的なミスを防止することが出来ます。
概要説明
NFS ARK では、ファイル共有システムであるNFS (Network File System) サービスを、HULFT ARK では、ファイル転送ミドルウェアであるHULFT (ハルフト) を保護対象リソースとして登録し、保護する機能(起動・停止・監視・再起動)を提供します。
※NFS ARK と HULFT ARK の関連性はありません。それぞれ独立した ARK ですので、複数の ARK を同時にご利用いただくことも、単独でご利用いただくことも可能です。
また、リソースの登録に関しては、必要な項目に対するパラメータをウィザード形式で入力または、選択することでリソースを簡単に作成することが出来ます。
ARK として、それぞれのアプリケーションの処理内容は以下の通りになります。
NFS の処理
処理名 | 処理内容 |
---|---|
起動処理 | ①NFSのサービス提供に必要な以下のプロセスの起動を ps コマンドにより確認し、起動していないプロセスの起動を実施 ・rpcbind ・rpc.idmapd ・gssproxy or rpc.svcgssd ・nfsd ・rpc.mountd ②pingnfs コマンドにより疎通確認を行い、疎通出来ない場合は nfsd 停止させ、再起動を実施 ③exportfs コマンドによりエクスポートポイントのエクスポートを実施 ④RESTARTMOUNTD パラメータが「true」の場合、rpc.mountd の再起動を実施 |
停止処理 | ①exportfs コマンドによりエクスポートポイントのアンエクスポートを実施 ②lockd を停止させ、ファイルシステムをアンマウントできるようにファイルロックの解放を実施 |
監視処理 | ①NFSのサービス提供に必要な以下のプロセスの起動を ps コマンドにより確認を実施 ・rpcbind ・rpc.idmapd ・gssproxy or rpc.svcgssd ・nfsd ・rpc.mountd ②pingnfs コマンドにより疎通確認を実施 ③/var/lib/nfs/etab よりエクスポートポイントがエクスポートされていることの確認を実施 ④/var/lib/rpc_pipefs が rpc_pipefs でマウントされていることの確認を実施 |
再起動処理 | 起動処理と同一の処理を実施 |
HULFT の処理
処理名 | 処理内容 |
---|---|
起動処理 | HULFTの各デーモン(snd,rcv,obs)の起動確認を行い、停止している場合は各デーモンの起動を実施 |
停止処理 | HULFTの各デーモン(snd,rcv,obs)の起動確認を行い、起動している場合は各デーモンの停止を実施 |
監視処理 | HULFTの各デーモン(snd,rcv,obs)の起動確認を実施 |
再起動処理 | 起動処理と同一の処理を実施 |
NFS ARK/HULFT ARK の構築例
それでは、実際に NFS ARK と HULFT ARK の構築についてお話していきたいと思います。
注意
HULFT ARK では、HULFT を制御する際、HULFT が提供しているクラスタ連携用のコマンドである hulclusterobs、hulclustersnd、hulclusterrcv を利用して、HULFT の起動や停止、状態監視を行います。
そのため、HULFT はクラスタ環境で稼働させるための構成(クラスタ連携用のコマンドが利用出来る構成)にする必要があります。
NFS ARK/HULFT ARK のパラメータ項目
NFS と HULFT のリソース作成時に設定する特有のパラメータを一覧表にまとめました。
NFS ARK のパラメータ
項目 | 説明 |
---|---|
Export Point |
次の条件に合致する NFS ファイルシステムのエクスポートポイントを選択
・エクスポートポイントが NFS によってエクスポートされている
・エクスポートポイントが共有ドライブ上にある
・基礎ファイルシステムが LifeKeeper に保護されている場合、基礎ファイルシステムは In Service で、かつ、 リソース作成時の稼働系サーバー上で最高の優先順位を持っている
・NFS似ルートファイルシステム(fsid=0)としたエクスポートポイント、およびその配下の同一ファイルシステム上のエクスポートポイントは対象外
|
IP Tag | 保護されている NFS ファイルシステムにアクセスするためにクライアントが使用する仮想 IP アドレスのタグ名を選択 |
HULFT ARK のパラメータ
項目 | 説明 |
---|---|
HULEXEP path | HULFTの実行モジュールの格納ディレクトリのパス名を入力 |
HULPATH path | HULFTの環境設定ファイルの格納ディレクトリのパス名を入力 |
HULFT administrator user name | HULFTインスタンスの起動・停止などを行う管理ユーザー名を入力 |
Filesystem Tag | 集信ファイル格納ディレクトリ等の、HULFTと関連付いたFileSystemリソース名を選択 |
NFS/HULFT リソースの作成
NFS と HULFT のリソースを LifeKeeper の GUI によって作成する流れを例として紹介します。
NFS リソースの作成
これで、LifeKeeper による NFS のリソースが完成です。
HULFT リソースの作成
これで、LifeKeeper による HULFT のリソースが完成です。
まとめ
今回は LifeKeeper ARK の導入事例と言うことで、NFS と HULFT のリソース作成について紹介してみました。
LifeKeeper ARK を購入することで、正式なサポートを受けられるほか、LifeKeeper として操作(起動・停止・監視・再起動)するためのスクリプトを準備する必要がなく、GUI 画面にてNFS 及び HULFT を構成する設定内容を選択または入力することで簡単にリソースとして導入が可能となっています。
LifeKeeper では NFS や HULFT 以外にも多数の ARK が用意されていますので、また次の機会に別の ARK について紹介していきたいと思います。
最後に NFS 及び HULFT ARK を導入するための手順を纏めます。
・LifeKeeper GUI を用いて、NFS 及び HULFT のリソースを作成する
・必要に応じてリソース構造を修正する
その他 ARK の導入事例に関しては以下のリンクからどうぞ!