SCSK 永見です。
Reserved Instance、Savings Plans。 コスト削減の話になると、よく出てきます。
これらを詳しく知ろうとして調べても、詳細な説明に終始して、そもそも何なの?というのがよくわからず困った記憶があります。
この記事は「Savings Plans チョットワカル」私が、この記事の読者に「Savings Plans完全に理解した」状態へ導く記事となっています。
前提事項
この記事は、初めてSavings Plans(以下、SPsと省略します)に触れる人向けに、分かりやすさに重きを置いて執筆しています。正確・詳細な情報は公式ドキュメントなどを参照にしてください。
また、料金はすべて例示の値です。正式な情報は料金表をご確認ください。

今回はEC2のSPsを例にとり、説明しています。
Savings Plansとは?
カフェで使えるプリペイドカードをイメージしてみましょう。
ドリンクの種類(全種類、コーヒー、カプチーノ、抹茶ラテ、etc…)、有効期限などを決めたうえで、金額を指定してチャージするようなプリペイドカードです。
このプリペイドカードで、指定したドリンクを購入することができます。
そして、普通に買うよりも割り引かれた金額でドリンクを購入することができます。
例えば、ホットコーヒー(以下、”コーヒー” と省略します)が1杯500円とします。
“コーヒー”用のプリペイドカードから支払うことで、20%引きの400円で飲めてしまいます。
さて、プリペイドカードをSavings Plansに、”コーヒー”をインスタンスに置き換えてみましょう。
SPsは、適用するインスタンスの種類、期間などを決めたうえで、金額を指定します。これをコミットメントといい、「期間中、1時間当たり$〇〇分のリソースを使います!」と宣言するようなイメージです。
このコミットメント額は、指定された条件と一致するEC2インスタンスに対して、その料金として充当されます。
割引後の金額合計がコミット額に達する分まで、割引を適用することができます。
例えば、Linux、t3.largeのEC2インスタンスが、オンデマンドでは1時間あたり$0.1とし、t3系のSPsを$1.00/hのコミットメントを1年間分、つまり$365分購入した とします。
このSPsの料金充当により、1時間あたり$0.06でEC2インスタンスを利用することができます。
じゃあたくさんチャージすればお得になるの?
安く使えるならたくさんチャージしておけば、お得になるんじゃないの?と思うかもしれませんが、そうはいきません。
このプリペイドカードは毎月一定額しか使えず、かつ1か月間の使用期限があります。使い切れなかった分は失効してしまいます。
なので、毎月コンスタントに”コーヒー”を飲む人にとってはお得ですが、1か月で12杯飲むために使用することはできません。
同じくSPsも、割引は一時間ごとに適用され、一時間のうちに使用されたEC2に対して割引が適用されます。
なので、24時間365日稼働するEC2がある場合にはお得ですが、一時的な開発で大量のEC2を使う という場合にはコストメリットは享受しづらいです。
どうやって使うの?
プリペイドカードは支払いの時に出すことで使うことができますが、SPsは購入するだけで勝手に割引が適用されます。
また、コーヒーは”1杯”に対して割引が適用されますが、SPsは対象のインスタンス”合計利用額”に対して割引が適用されます。
ちょっと難しいので、詳しく説明します。
例えば、このようなケースを想定してみましょう。
- t3のEC2 Instance Savings Plans を$1.00/h分購入
- t3.largeのEC2インスタンスが20台、1時間稼働。
- このt3.largeインスタンスにおけるオンデマンド料金は$0.1/h、SPs料金は$0.06/h。削減率は40%=100%-$0.06÷$0.1
結論はこんなイメージになります。点線内がSPsによる充当で合計$1.00、点線外がオンデマンド価格となります。
細かく計算過程を追ってみましょう。
このケースの利用額は、全額オンデマンド料金と全額SPs料金の場合それぞれ算出すると、以下のようになります。
今回はSPsを$1.00分購入しているので、以下のように一部SPsによる充当、一部オンデマンドによる支払いに分けます。
$1.00のSPsによる充当額と、充当しきれなかった分のオンデマンド相当額の$0.33、計$1.33がかかります。
もっと安くするにはどうしたらいいの?
もっとお得に、つまりもっと安く”コーヒー”を飲むにはどうしたらいいでしょうか。
3つ方法があります。
方法その1:有効期限が長いものを買う
このプリペイドのチャージ方式は有効期限1年間(指定金額×12ヶ月分)と3年間(指定金額×36ヶ月分)があります。
3年間のほうが、より割引率が高く、安く”コーヒー”を買うことができます。
※指定金額を大きくしても割引率は大きくなりません。
さて、プリペイドカードをSPsに、”コーヒー”をインスタンスに置き換えてみましょう。
SPsは、期間が1年間(コミットメント額×24時間×365日)と3年間(コミットメント額×24時間×365日×3年間)があります。
3年間のほうが、より割引率が高くなります。
※コミットメント額を大きくしても割引率は大きくなりません。
方法その2:先払いする
このプリペイドカードには3種類のチャージ方法があります。
1つは最初に全額チャージしてしまう方法、2つ目は一部チャージしてのこりを毎月チャージする方法、3つ目は毎月チャージする方法。
最初にチャージする金額が大きいほど、より割引率が高く、安く”コーヒー”を買うことができます。
さて、プリペイドカードをSPsに、”コーヒー”をインスタンスに置き換えてみましょう。
SPsは、支払い方法が全額前払い、一部前払い、前払いなしの3種類あります。
最初に払う金額が大きい、つまり全額前払い→一部前払い→前払いなし の順番で、より割引率が高くなります。
方法その3:専用プリペイドカードを買う
このプリペイドカードは、カフェの全商品に対して使える「なんでもプリペイドカード」と、特定の商品に対して使える「専用プリペイドカード」があります。
なんでもプリペイドカードよりも、専用プリペイドカードのほうが、より割引率が高く、安くコーヒーを買うことができます。
さて、割引券をSavings Plansに、コーヒーをインスタンスに置き換えてみましょう。
EC2に適用できるSPsには、Compute Savings PlansとEC2 Instance Savings Plansがあります。
Compute Savings Plansはあらゆる種類のEC2に適用されますが、EC2 Instance Savings Plansは購入時に指定したインスタンスファミリーのみに適用できます。
指定したインスタンスファミリーにしか適用できないSPsのほうが、割引率は高くなります
まとめ
SPsとはそもそも何なのか、について説明しました。
SPsの活用はじめ、コストに関してお困りごとがあればぜひSCSKまでご相談ください!