こんにちは、SCSKの前田です。
いつも TechHarmony をご覧いただきありがとうございます。
今回は、Windows 版 LifeKeeper / DataKeeper の最新バージョン v8.11.0 に追加された新機能を中心に、製品の進化ポイントをご紹介します。
はじめに
Windows 版 LifeKeeper 製品の最新バージョンでは、新機能の追加に加え、バグ修正・機能強化、そして アップグレード時の注意点がリリースノートに記載されています。
本記事では、それらの内容をわかりやすく整理し、皆さまのシステム運用に役立つ情報をお届けします。
本記事公開時点での LifeKeeper 関連製品の最新バージョンは以下の通りです:
- LifeKeeper for Windows v8.11.0
- DataKeeper for Windows v8.11.0
LifeKeeperとは?(おさらい)
LifeKeeper は、ビジネスの継続性を支える 高可用性(HA: High Availability)クラスターソフトウェア です。
サーバーやアプリケーションに障害が発生した際、その影響を最小限に抑え、システムが止まることのないよう自動で復旧・切り替えを行うのが LifeKeeper の主要な役割です。
具体的には、複数のサーバー(ノード)でクラスターを構成し、稼働系サーバーで障害が発生した場合、LifeKeeper がそれを検知し、瞬時に待機系サーバーへ処理を移行します。この一連の自動切り替え処理を「フェイルオーバー」と呼びます。
LifeKeeper の強みは、OS・ミドルウェア・データベース・アプリケーションなど、様々な 「保護対象リソース」 の状態を監視し、それらをグループ化して切り替え制御を行える点にあります。
この 柔軟なリソース保護 と、複雑な設定なしに利用できる使いやすさ が、多くの企業に採用される理由です。
リリースノートでは、この LifeKeeper の 「保護能力」 や 「監視精度」、そして 「フェイルオーバーの信頼性」 をさらに高めるための新機能や改善点、対応環境の拡充などが記載されています。
最新バージョンで、より堅牢で効率的なシステム運用を実現するための進化の全貌を、ぜひご覧ください。
新機能:LifeKeeper/DataKeeperの進化のポイント
本章では、Windows 版 LifeKeeper / DataKeeper の最新バージョンで追加された 注目の新機能についてご紹介します。
企業システムの信頼性向上や運用効率化に直結する、実用性の高い機能強化ポイントを中心に解説していきます。
① Windows Server 2025 への対応強化
最新バージョンでは、Windows Server 2025 が新たにサポート対象に加わりました。これにより、企業は次世代OS環境への移行をスムーズに進めながら、LifeKeeper / DataKeeper の高可用性機能を継続して活用できます。
特に、汎用アプリケーション保護におけるVBスクリプト対応については注意が必要です。Windows Server 2025では、VBスクリプトがオンデマンド機能として提供されており、有効化されている場合のみ動作します。これに対応するため、LifeKeeper内の既存VBスクリプトは、サポートされるスクリプト言語へと変換されており、より安定した運用が可能となっています。
この対応により、将来のOS環境でも継続的なHA運用が可能となり、企業のITインフラの長期的な信頼性確保に貢献します。
② 障害解析を効率化するクラッシュダンプ収集機能
LifeKeeper v8.11.0 では、障害発生時のトラブルシューティングを支援する新機能として、LK Core プロセスのクラッシュダンプ収集機能が追加されました。
この機能により、LK Core プロセスに異常が発生した際、クラッシュダンプが自動的に %LKROOT%/SUPPORT/ProcessDumps フォルダーに出力されるようになります。
収集の有効・無効は、設定ファイル %LKROOT%\etc\default\LifeKeeper に追加された変数 ENABLE_CRASH_DUMPS によって制御され、デフォルトでは収集が有効(1)となっています。
さらに、lksupport 実行時にクラッシュダンプが存在する場合、それを自動で回収する機能も追加されており、障害調査の効率化に貢献します。
設定変更後は、LifeKeeper の再起動または ConfigureDumps.pl ユーティリティの実行により反映されます。
この機能追加により、障害発生時の原因特定が迅速かつ確実に行えるようになり、システムの信頼性と保守性が大幅に向上します。
③ ミラーボリューム上のページファイル作成を制限
DataKeeper v8.11.0 では、ミラーボリューム上でのページファイル(仮想メモリファイル)の作成を制限する機能が追加されました。
ページファイルは、Windows が物理メモリを補うために使用する重要なシステムファイルですが、冗長化されたミラーボリューム上に配置されると、不要な読み書きが発生し、クラスタ全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
本バージョンでは、ページファイルの作成がミラーボリューム上で実行された場合でも、再起動時にはその配置が無効化されるよう制御されており、意図しない構成による性能低下を防止します。
この機能により、高可用性クラスタ環境におけるストレージ運用の最適化が図られ、より安定したシステムパフォーマンスの維持が可能となります。
④ 最新プラットフォームへの対応拡充
LifeKeeper v8.11.0 では、企業インフラの最新化を支援する新たなプラットフォーム対応が追加されました。
まず、VMware vSAN 8.0(2025年8月認定)への対応により、仮想化環境での高可用性構成がさらに柔軟に。vSAN は、ストレージの集約と効率化を実現するソリューションであり、これにLifeKeeperが対応することで、仮想化基盤上でも安定したHAクラスタ運用が可能となります。
また、OpenJDK v24.0.1 のサポート追加により、Javaベースの管理ツールやスクリプト環境においても、最新のセキュリティパッチや機能を活用しながら安定運用が可能となりました。
これらの対応は、将来のインフラ拡張やセキュリティ強化を見据えた運用設計において、企業にとって大きなメリットとなります。
バグ修正・機能強化:システムの安定性と運用性を向上
ここでは、多岐にわたるバグ修正および機能強化について、主な項目を一覧でご紹介します。
LifeKeeper for Windows v8.11.0
No | 項目 | 内容 |
---|---|---|
1 | QSPリソースのローカルリカバリー設定に関する修正: | QSP(Quick Service Protection)リソースを拡張した際に、プライマリーノードの設定に関わらずバックアップノードのローカルリカバリーが無効になってしまう問題を修正しました。 |
2 | QSPリソースプロパティのタイムアウト表示修正: | QSPリソースのプロパティ画面でタイムアウト値を修正する際のエラーダイアログに表示される上限値が誤っていたのを修正しました。 |
3 | Oracleリソース拡張失敗の問題を修正: | Oracleリソース拡張が失敗する問題を修正しました。 |
4 | IISリソース:FTPサイト匿名認証無効時のrestore処理修正(deepCheck間隔0): | IISリソースでFTPサイトの匿名認証を無効にした際、deepCheck間隔を0にしていてもrestore処理に失敗する問題を修正しました。 |
5 | IISリソース:FTPサイト匿名認証無効時のrestore処理修正(FTPログインスクリプト): | IISリソースでFTPサイトの匿名認証を無効にした際、FTPログインスクリプトを作成してもrestore処理に失敗する問題を修正しました。 |
6 | Windows Server 2025でのコミュニケーションパス作成問題を修正: | Windows Server 2025環境でコミュニケーションパスの作成ができなくなる問題を修正しました。 |
7 | SQL ARKのスクリプトにおけるパスワード表示問題を修正: | SQL Server Recovery Kitのrestoreおよびdeepchkスクリプトでset-xトレース出力にデータベースパスワードが表示されてしまう問題を修正しました。 |
8 | IISリソース:FTPサイトSSL必須時のrestore処理修正: | IISリソースでFTPサイトのSSLを必須にした際、restore処理に失敗する問題を修正しました。 |
9 | Windows Server 2025でのwmic有効化問題を修正: | Windows Server 2025環境でwmicコマンドが有効にならない問題を修正しました。 |
10 | v8.10.1からのアップグレード中のgetlocks失敗問題を修正: | v8.10.1からのLifeKeeperアップグレード中にgetlocksコマンドが失敗する問題を修正しました。 |
11 | QSPリソース変更画面の表示修正: | ローカルリカバリーが無効な場合でも、QSPリソースの変更画面で「有効」と誤って表示されるのを修正しました。 |
DataKeeper for Windows v8.11.0
No | 項目 | 内容 |
---|---|---|
1 | DataKeeper共有ボリュームのI/Oフェンシングメカニズムの改善: | DataKeeper共有ボリュームのI/Oフェンシングメカニズムを改善しました。 |
2 | IRP_MJ_SHUTDOWN処理の改善: | IoRegisterShutdownNotification呼び出しを削除してIRP_MJ_SHUTDOWN処理を改善しました。 |
スムーズな移行のために:LifeKeeper/DataKeeper アップグレード時の重要事項
LifeKeeper 関連製品のアップグレードを安全かつ確実に実行していただくため、以下の重要な注意点をご確認ください。
LifeKeeper for Windows v8.11.0
共有ストレージリソースとDataKeeperの連携
LifeKeeper for Windows v8.9.0 以降では、共有ストレージを使用した共有ボリュームリソースの作成・管理に DataKeeper for Windows が必須となりました。LifeKeeper for Windows v8.9.2 以降のインストーラーには、LifeKeeperとDataKeeperの両方が含まれています。
【補足】 DataKeeper for Windows のミラーリング機能(データ複製機能)を利用しない場合は、DataKeeper のライセンスは不要です。共有ストレージ経由での共有ボリュームリソースの管理に必要なモジュールとして DataKeeper が導入されます。
Perlバージョンの変更とカスタムPerlコードへの影響
LifeKeeper for Windows v8.10.1 以降、同梱されるPerlが Perl 5.32.1 にアップグレードされています。LifeKeeper for Linuxの場合と同様に、カスタムで Perl コード(Generic ARK など)を使用している場合は、この Perl アップデートに対応するためのコード変更が必要になる可能性があります。
【対応】 アップグレード前に、ご利用のカスタム Perl コードが新しい Perl バージョンで正しく動作するか、互換性を十分に検証してください。詳細については、「Perl 5.8.8からPerl 5.32.1へのアップグレード」ドキュメントをご参照ください。
ライセンス形態の変更と更新(非ノードロックライセンス)
LifeKeeper for Windows および DataKeeper for Windows(Application Recovery Kit など関連製品含む)は、v8.9.1からHostID に依存しない非ノードロックライセンスを提供しています。LifeKeeper v8.9.0 / DataKeeper v8.9.0 までのノードロックライセンスはそのまま使用可能ですが、新しい非ノードロックライセンスへ切り替える場合は、アップデート後にライセンスの更新作業が必要となります。
【対応】 既存のライセンスを継続利用するか、非ノードロックライセンスへ更新するかを検討し、更新が必要な場合はアップデート後に所定の手順でライセンスを更新してください。
ダウンロードした製品の整合性確認
ダウンロードした製品ファイルの整合性を確認するために、md5sum を使用することをお勧めします。
【コマンド例】
certutil -hashfile <file> MD5
このコマンドを実行すると、ダウンロードしたファイルの MD5 ハッシュ値が出力されますので、提供されている .md5 ファイルの内容と比較して、ファイルが破損していないことを確認してください。
8.10.1 以前からのアップデート時の注意点(ローリングアップデート)
v8.10.1 以前のバージョンからアップデートする際に、クラスター内の片方のノードだけをアップデートし、その状態でリソースを In-service にすると、イベントログに「lcdwait.exe: -R option is required」というメッセージが出力される場合があります。
【対応】 このメッセージは、もう片方のノードも同じバージョンにアップデートすることで出力されなくなります。これは、ローリングアップデート中に一時的に発生する可能性のある警告であり、両ノードのアップデートが完了すれば解消されます。
DataKeeper for Windows v8.11.0
ローリングアップデートのサポート
DataKeeper for Windows v8.11.0 では、対象システムを切り替えて更新するローリングアップデートがサポートされています。
【補足】 これにより、サービス停止時間を最小限に抑えながら、クラスター内のノードを順番にアップデートすることが可能です。具体的な手順については、公式ドキュメントを参照してください。
まとめ
今回は、LifeKeeper製品の最新バージョンに記載されている新機能、バグ修正/機能強化、そしてアップグレードの注意点についてご紹介いたしました。
ビジネス継続性を支える高可用性(HA)クラスターソフトウェアとして、LifeKeeperは常に進化を続けており、およそ半年に一度のペースでアップグレードを実施しています。
今後もLifeKeeperの新機能や改善点、対応環境の拡充など、皆さまがより堅牢で効率的なシステム運用を実現できるよう、LifeKeeperに関する情報発信を続けてまいります。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。