こんにちは、SCSKの木澤です。
私は昨年よりSCSKにてWell-Architectedレビューも担当しております。
今回は2021年12月より追加された6本目の柱である「持続可能性の柱」の中にある設問について触れたいと思います。
AWS Well-Architected Framework 持続可能性の柱について
AWS Well-Architected Frameworkは、AWS上に構築されたシステム(ワークロード)を AWSのベストプラクティスに則って活用する ためのフレームワークであり、6つの柱(カテゴリ)で構成されます。
- 運用上の優秀性
システムを継続的に運用・改善する体制や仕組みが整っているかどうか - セキュリティ
システムを安全に運用するため、AWSの各種セキュリティ関連サービスを正しく設定し運用しているかどうか - 信頼性
システム毎にサービスレベルを定義し、それに基づき可用性向上やデータ保全の仕組みを設定・運用しているかどうか - パフォーマンス効率
適切な性能を得るために各種AWSリソースの選択をし、観測できる状態であること - コスト最適化
AWSサービスの利用状況を観測し、コストターゲットに合わせた選択となっていること - 持続可能性
サステナビリティに配慮したアーキテクチャの選択ができていること
6つめの柱である持続可能性(サステナビリティ)の柱については、2021年のre:Inventにて追加が発表されました。
また2022年のre:Inventの基調講演では、更なる環境への配慮として以下が発表されたところは記憶が新しいところかと思います。
- 2025年までに、クラウドインフラで消費する電力を100%再生可能エネルギーにする
- 2030年までにウォーターポジティブ(Water+)を達成し、AWSの事業で使用した量以上の水を地域社会に還元する
システムの構成・アーキテクチャの選定においても、持続可能性(サステナビリティ)に配慮するように、ということですね。
現在のところアーキテクチャ選定の要件としてサステナビリティが反映されることは稀ですが、SDGsへのコミットメントが今後求められるようになるにつれて重要度が増してきそうです。
上記の通り、AWS自体が再生可能エネルギーにシフトしてきていることもあり、今後は「AWSなどクラウドを採用すること」自体がサステナビリティへの貢献になることも考えられます。子孫の世代に美しい地球を残すためにも、できる限りのことは対応していきたいですね。
サステナビリティに配慮したリージョンの選択
AWS Well-Architected Frameworkには、AWSのベストプラクティスに則って活用できているかチェックできる AWS Well-Architected Toolがあります。その中にも持続可能性の柱は含まれており、2023年1月現在、6つの設問で構成されています。
各設問については、ここで解説されています。
また、AWSコンソール内のAWS Well-Architected Tool内でも参照・レビューできます。
今回は設問の中にある、SUS.1 について興味を持ったので調べてみました。
リージョン選択において、サステナビリティを考慮してますか?という設問になります。
リージョン選択において、そこまで検討している事例はほとんど無いのではないでしょうか。
本設問に関する解決策は、AWS Blogにて解説がありましたので、それを踏まえて以下解説します。
一般的なリージョン選択基準
通常、システムを構築するAWSリージョンを選択する際は以下の要素を考慮するものと思います。
- ネットワークの観点
エンドユーザーからの距離を小さくし、レイテンシーを軽減したい。
あるいは回線キャリアが対応するDirect Connectのロケーションからリージョンを選ぶケース。 - コンプライアンス的な観点
機密情報や個人情報を含むデータを国外で保管したくないようなケース - 利用するサービスの対応状況
利用するAWSサービスの対応状況から、自ずと選ぶことができるリージョンが狭まるケース - コスト
とにかくコストを抑えたい、ということで、比較的廉価なリージョンを選ぶケース
本質問は、この選択基準に選択肢を追加してはどうか、ということのようです。
Amazonの再生可能エネルギープロジェクトに近いリージョン
まず、設問の前半にある Amazonの再生可能エネルギープロジェクトに近いリージョン 、これは以下サイトにて確認できます。
例えば東京周辺にはAmazonが関わる3カ所の太陽光発電関連の施設があることが解ります。
炭素集約度が他の場所よりも低いリージョン
設問の後半にある炭素集約度とは、エネルギー消費量単位あたりの二酸化炭素排出量(gCO₂eq/kWh)のことを指します。
要するに、電力需要のうち化石燃料の占める割合が高くなる程、数字が大きくなると言うわけです。
Amazonが投資する再生可能エネルギーの設備が増え、当該リージョンで賄う電力の100%が再生可能エネルギーになったとしても、あいにくその地域での電力需要に対するCO2発生量が異なれば、CO2発生量の少ないリージョンを選択しましょう、ということのようです。
炭素集約度の情報は上記Blogからもリンクされている以下サイトで確認することができます。
本サイトで確認すると、日本はあいにく炭素集約度は高い傾向にあります。
アメリカでは地域に依るようですね。
昨年にシアトルに訪問した際、公共交通機関が発達しており、バスも概ねトロリーバスやハイブリッド車になっていたことに感心したのですが、これはやはり(水力発電が多く)ワシントン州の電力状況が良いことに起因しているようです。
他にも、欧州では原子力発電での依存度が高いフランスや再生可能エネルギーが多く普及しているスペインで炭素集約度が低くなっていることが確認できます。
このサイトによって、サステナビリティに配慮したリージョンの選択の参考になりそうです。
まとめ
途中で触れたように、現在のリージョン選択の基準においてサステナビリティの観点が考慮されることは稀で、ネットワークやコンプライアンス、コストの要件で選択されることが多いかとは思います。
それらの要件が緩く、仮に自由にリージョンを選択できるような場合では、是非サステナビリティの観点も加えて検討頂ければと思います。
それが持続可能な社会を目指す一助になればいいですね。