Kong連載第3回 API運用のインフラ負担をゼロに。SaaS型管理基盤「Kong Konnect」がエンタープライズに選ばれる理由

こんにちは。SCSKの石田です。

今回はKongの連載記事第3回です。
前回の記事では、Kong API Gatewayの最も重要な基本概念である「Service(サービス)」と「Route(ルート)」について解説し、実際にAWS上の環境を使ってAPIリクエストのルーティングを行いました。

前回はcurlコマンドを使ってAPI経由で設定を行いましたが、実際のビジネス環境での運用を想像した際、「複数の環境(開発・ステージング・本番)がある中で、毎回コマンドで管理するのはリスクが高そう…」「システム全体のガバナンスやセキュリティポリシーはどう統一すればいいのだろう?」と、運用の難しさを感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで第3回となる今回は、それらのエンタープライズ固有の課題を解決し、API運用を強力に自動化・統合するSaaS型プラットフォーム「Kong Konnect(コング コネクト)」の価値について解説します。

 

Kong Konnectとは?単なる管理画面を超えた統合プラットフォーム

Kong Konnectは、Kong Inc.が提供するAPIライフサイクルマネジメントのためのSaaS型プラットフォームです。

商用版のKongを利用する際の標準的な管理インターフェースであり、APIのルーティング設定から、高度なセキュリティプラグインの適用、トラフィックのリアルタイム可視化、さらには社内外の開発者向けポータルサイトの構築まで、APIマネジメントに必要なあらゆる操作をブラウザ上のGUIから直感的に行うことができます。

このKong Konnectがエンタープライズ企業、特に厳格なセキュリティを求められるお客様に強く支持されている最大の理由が、「Control Plane(コントロールプレーン)」と「Data Plane(データプレーン)」の完全な分離アーキテクチャにあります。

 

セキュリティと運用効率を両立する「分離アーキテクチャ」

Kong Konnectを利用したシステムは、役割に応じて明確に2つのコンポーネントに分かれます。

  • Control Plane(管理基盤): Kong Konnect(SaaS)側が担います。APIの設定情報の作成・保持、セキュリティポリシー(プラグイン)の割り当て、分析データの集計などを行います。
  • Data Plane(実行基盤): お客様の環境(AWS ECS、Azure AKS、オンプレミスなど)に構築されたKong API Gateway本体が担います。実際にクライアントからの大量のAPIトラフィックを受け止め、高速にバックエンドへ転送する役割を持ちます。

 

管理者はブラウザからSaaS上のControl Planeにアクセスして安全に設定変更を行うだけで、その情報が瞬時にお客様環境のData Plane(Kong API Gateway)に同期されます。

この分離アーキテクチャがもたらす最大のメリットは、「設定や管理に関わるインフラの維持保守はSaaSに任せて運用負荷を激減させつつ、実トラフィックはお客様のセキュアなネットワーク(VPC内など)に閉じ込めて高速に処理できる」という点にあります。データの社外流出リスクを極限まで抑えたい企業にとって、まさに理想的なハイブリッドモデルです。

 

企業のインフラ戦略に応える究極のデプロイ柔軟性

また、Kong Konnectは上記のようなハイブリッド構成だけでなく、企業のコンプライアンス要件やインフラ戦略に合わせて、以下のような多様なデプロイモデルを選択可能です。

  • フルSaaS構成(Cloud Gateways): ゲートウェイ本体のインフラ構築・管理すら完全にゼロにしたい場合、Data PlaneもKongが提供するSaaS環境にホスティングすることができます。
  • フルオンプレミス構成(Self-Managed): 非常に厳格な業界規制などにより「設定情報すら一切外部のSaaSに出せない」「閉域網で完結させたい」という場合、Control Planeも含めてすべて自社のオンプレミスやプライベートクラウドに自前で構築・運用することも可能です。

この「企業の都合に合わせてどこにでも配置できる」柔軟性こそ、システム環境が複雑化しやすいエンタープライズにおいてKongが選ばれる決定的な理由となっています。

 

APIライフサイクルを網羅する強力なコンポーネント群

Kong Konnectは単なるゲートウェイの設定画面にとどまりません。現在のビジネスに不可欠な、セキュリティ、ガバナンス、そして最新トレンドである「AIの統制」までを網羅するメニューが用意されています。簡単にですがご紹介します。

  • API Gateway: システムの内外を繋ぐ通信(North-South)のルーティング、Consumer(利用者)管理、各種セキュリティプラグインの一元設定を行います。
  • Identity & Organization: 外部IdP(Microsoft Entra IDやOktaなど)と連携した管理者向けのSSO(シングルサインオン)や、チームごとの詳細なアクセス権限管理(RBAC)を実現し、大規模組織での安全な共同開発を支えます。
  • Catalog & API Products: 組織内に散らばるAPIを中央集権的に「辞書」として登録・管理。さらに、複数のAPIを用途に合わせて1つの「商品(プロダクト)」としてパッケージ化し、バージョン管理を行うことができます。
  • DevPortal: APIを利用する開発者向けの専用ポータルサイトをノンコードで構築。仕様書の閲覧やAPIキーの発行をセルフサービス化し、開発スピードを圧倒的に向上させます。
  • Observability: ゲートウェイを通過するリクエスト数、レイテンシ、エラー率などをリアルタイムに可視化し、システムの健全性をひと目で把握します。
  • AI Gateway 昨今最も注目されている機能です。企業内で利用される複数のLLM(OpenAI、Geminiなど)へのルーティング、認証情報の隠蔽、プロンプトのセキュリティ監査、トークン利用量の可視化などをゲートウェイ層で一元的に統制します。

企業のITガバナンスを効かせながら、APIの公開と利用のサイクルを高速に回すための仕組みが、この一つのプラットフォームに集約されています。

 

さらにエンタープライズ企業に選ばれる3つの理由

インフラの分離アーキテクチャや豊富な機能に加えて、大規模な組織構造を持つエンタープライズ企業にKong Konnectが選ばれる決定的な理由が他にもあります。

1. 組織やプロジェクトごとの「マルチテナント管理と厳密な権限分離」
全社共通のAPI基盤を構築する際、「A部門の開発者にはAプロジェクトのAPIだけを操作させたい」といった環境の分離が必須になります。Kong Konnectでは、コントロールプレーン内に複数の論理的なワークスペースを作成し、きめ細やかなロールベースアクセス制御(RBAC)を設定できるため、大規模組織でも安全なマルチテナント運用が可能です。

2. 高度なセキュリティを即座に実現する「商用版専用プラグイン」
社内のゼロトラストアーキテクチャを実現するためには、APIへのアクセスを厳格に制御する必要があります。Kong Konnectであれば、Microsoft Entra IDなどの外部IdPと連携したOIDC/SAML認証、mTLS(相互TLS認証)、OPA(Open Policy Agent)連携による動的認可など、エンタープライズ向けの強力な専用プラグインが標準提供されており、これらをGUIから適用するだけで即座に高度なセキュリティを実装できます。

3. ミッションクリティカルな要件に応える「SLAとセキュリティコンプライアンス」
基幹システムや機密データを扱うAPI基盤として、Kong KonnectのSaaS環境はSOC 2やPCI DSS、CSA STARなどの厳格なセキュリティ・コンプライアンス基準をクリアしています。また、商用サービスならではの高い稼働保証(SLA)が提供されているため、システム停止が許されないミッションクリティカルな領域でも安心して導入いただけます。

 

直感的なGUIで運用のストレスを解放

ここで少し実際の画面を見てみましょう。前回(第2回)にコマンドラインから作成した「Service」と「Route」の設定が、Kong KonnectのGUI上でどのように表現されているかを確認してみます。

画面上のメニューから該当のControl Planeを選択すると、システム全体のルーティング状況が視覚的に確認できます。

また、以下の画像のように、前回コマンドで作成したRouteとServiceの状態も、ブラウザ上で直感的に管理できます。

新しいAPIを追加したい場合、画面上の「New route」ボタンをクリックしてパスやメソッドを入力するだけで設定が完了します。この変更は、即座に手元のData Planeに安全に同期され、通信に反映されます。CLIとGUIの双方をシームレスに使い分けられる点が、運用を支えるエンジニアにとって非常に嬉しいポイントです。

 

まとめ:エンタープライズAPI管理のベストプラクティス

今回は、Kongの商用運用における中核プラットフォーム「Kong Konnect」について解説しました。

  • Control PlaneをSaaSに任せることで、運用のインフラ維持コストを最小化できる。
  • Data Planeを自社環境(VPCなど)に配置する分離アーキテクチャにより、高いセキュリティを担保できる。
  • APIの公開、セキュリティ、ポータル提供、さらにはAIトラフィックの統制までを1つのGUIでカバーできる。

単に「APIを繋ぐ」だけでなく、「安全に、効率よく、統制を持って運用する」というエンタープライズのシビアな要求に、Kong Konnectは最適な答えを提供してくれます。

SCSKでは、Kongのセールスパートナーとして、ライセンスの提供にとどまらず、お客様のビジネス要件に合わせたアーキテクチャ設計から構築、運用の並走までトータルでサポートしています。API管理基盤のモダナイゼーションや、今後のインフラ構想に課題をお持ちの方は、下記窓口までお気軽にご相談ください。

■お問い合わせ窓口:SCSK株式会社 Kong担当(kong-sales@scsk.jp
ちなみに当社のKong紹介ページでもKongを紹介しております。

さて、次回は先ほどの機能紹介でも少し触れた、今最もホットなテーマである「Kong AI Gateway」をピックアップします!企業が生成AIを活用する際、セキュリティとガバナンスをゲートウェイ層でどう守るべきなのか、具体的な解決策をお届けします。どうぞお楽しみに!

著者について

AWSを中心としたサーバレスなアーキテクチャの構築と、その上で動作するアプリの開発をするチームにいます。アジャイル、DevOpsのスタイルが好きです。
昨年はKongと生成AIの面白さに気付きました。

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