本記事は TechHarmony Advent Calendar 2025 12/2付の記事です。 |
AWS re:Invent とは?
- AWS re:Invent とは?
AWS に関する画期的な講演や実践的な技術セッションなどが 1 週間にわたって行われる最大規模のイベントです。世界中から AWS コミュニティが集まり、入門者から熟練の専門家までがスキルレベルに合ったハンズオンに取り組めたり、AWS サービスに関する最新の発表を聞くことができたりします。 - 期間
2025年12 月1日から 12月5日まで - 場所
アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス - セッション数
2710 個以上 - 開催形態
対面あるいはライブ配信、オンデマンド - 公式サイト
AWS re:Invent 2025 | December 1 – 5, 2025Build the future with us at AWS re:Invent, Dec 1 – 5, 2025 in Las Vegas, NV. Learn new skills, take home proven strategi...
セッション内容の解読に至った背景
re:Invent の公式サイトには、実施されるセッションの概要を見ることができる Event Catalog があります。
公式サイトを初めて見た際に、まずは Event Catalog を見たのですが、以下の 3 つの特徴から読み取ることができず困ってしまいました。
- 公式サイトは英語で作成されている
- セッションが 2710 個以上と多数あり、どれから見たらいいかわからない
- 知らない専門用語が多く書かれている
Building Quantum-Safe Systems with Post-Quantum Cryptography on AWS (SEC404)AWS の最新のポスト量子暗号機能を用いて、量子コンピューティング時代に向けたシステムを準備する方法を学びましょう。このハンズオンワークショップでは、AWS KMS と ML-DSA および ML-KEM を用いたポスト量子暗号鍵管理の実装、AWS プライベート認証局を用いたポスト量子暗号証明書のデプロイ、ハイブリッドポスト量子暗号 TLS ハンドシェイクの分析を行います。実践的な演習を通して、ポスト量子暗号アルゴリズムと従来のアルゴリズムのベンチマークを行い、ポスト量子暗号プロトコルを用いた安全なファイル転送を実装します。AWS サービスを用いたポスト量子暗号の実装に関する具体的な経験と、アプリケーションのパフォーマンスへの影響について理解を深めることができます。
Quantum Computing with Amazon Braket: From Exploration to Enterprise (CMP411)Amazon Braket を通して、量子コンピューティングという新たな分野を探求しませんか。このセッションでは、AWSの量子コンピューティング戦略と最新のサービス機能の概要を説明し、組織が従来のコンピューティングワークロードと並行して量子アルゴリズムの実験を開始する方法を紹介します。上級技術リーダーやビジネスリーダーは、現在の量子コンピューティング機能、実験アプローチ、そして将来の量子コンピュータがHPCシステムとどのように統合されるかについて、明確な理解を得ることができます。
- セッションが 2710 個以上と多数あり、どれから見たらいいかわからない
- 知らない専門用語が多く書かれている
- 特定のトピックでセッションに限定する
- そのトピックについて AWS の関連情報を収集する
- セッション概要を読み直す
特定のトピック「量子コンピューティング」
1. の特定のトピックは「量子コンピューティング」にしました。
特定のトピックを選ぶにあたって、従来の暗号アルゴリズムは量子コンピュータによって突破されるリスクがあり、機密情報の保護に課題があるという話題が思い浮かびました。この話題の最新性から、AWS re:Invent では、実際に量子コンピューティングに関するどのような最新情報が得られるのか興味を持ち、「量子コンピューティング」を選択しました。
より詳しく説明したいのですが、本記事では省略します。
「quantum」というキーワードで Event Catalog をフィルタリングすると、関連セッション数は 25 個程度に絞り込めました。
量子コンピューティングと AWS の関連情報のまとめ
この章では、調べる中で発見した過去の re:Invent での発表や関連ニュース、アップデート情報について紹介したいと思います。
過去の re:Invent での発表
過去の re:Invent では、量子コンピューティングに関してどのような発表がされたのかを調べてみました。
2019 年の同イベントでは、量子コンピューティングサービスである「Amazon Braket」が発表されました。
このサービスは研究者や科学者、開発者が量子アルゴリズムを簡単に構築・実行可能なサービスです。
Amazon Braket では、量子アルゴリズムの実装のトラブルシューティングと検証に役立つシミュレーションを利用することができます。
また、昨年度の同イベントでは以下のセッションがありました。
- AWS における量子コンピューティングの取り組みについて
- 量子コンピュータによる攻撃に耐える安全なアルゴリズム(ポスト量子暗号)について
太字で書いている「ポスト量子暗号」は AWS の関連ニュースやアップデート情報にも登場しており、非常に重要な用語です。 - 量子コンピューティングと AI の組み合わせについて
- NVIDIA CUDA-Q 環境と Amazon Braket の統合について
これらの発表は、Web 記事で日本語でまとめられており、大変参考になります。
AWS の関連ニュース
今年 2025 年の量子コンピューティングと AWS の関連ニュースを 2 つ紹介します。
- ポスト量子暗号の移行計画を AWS ブログで発表(2025/02/12)[1]
通信プロトコルとデジタル署名で用いられている既存の公開鍵暗号アルゴリズムは、大規模な量子コンピュータによって解読できる可能性があります。
これに対して、AWSのポスト量子暗号への移行がどこまで進んでいるのかと今後の多層的な移行について発表されていました。具体的な中身としては、暗号化サービスやデジタル署名へのポスト量子アルゴリズムの導入などが書かれています。
- 新しい量子チップ「Ocelot」の開発(2025/03/14)[2]
AWSが新しい量子コンピューティングチップを開発しました。
量子コンピューティングは高い演算性能を持つ一方で、振動や熱、電磁干渉のわずかなノイズに敏感な特性を持っています。
そのため、複雑な計算をエラーなく、高い信頼性で実行できる量子コンピュータが求められています。
AWS はエラーの訂正を最優先としたアーキテクチャを設計し、エラー訂正のコストを最大 90% 削減可能な量子チップ「Ocelot」を発表しました。
AWS アップデート情報
AWS アップデート情報の中で量子コンピューティングに関連するものを 2 つ紹介します。
AWS の関連ニュースで紹介したポスト量子暗号計画に記載があったように、ポスト量子暗号をへの移行に関連したアップデートが発表されていました。
- AWS KMS がポスト量子 ML-DSA デジタル署名のサポートを追加(2025/06/13)[3]
AWS KMS が NIST(National Institute of Standards and Technology、米国国立標準技術研究所)によって標準化された量子コンピューティングによる解読に耐性があるデジタル署名アルゴリズムのサポートを新たに開始しました。量子コンピュータによる暗号解読から機密情報を保護する機能が導入されていることが確認できます。
- Amazon CloudFront において、ポスト量子をサポートする TLS セキュリティポリシーがリリース(2025/09/05)[4]
Amazon CloudFront における既存の TLS セキュリティポリシーで、従来のアルゴリズムとポスト量子アルゴリズムを組み合わせたハイブリッドなキー確立がサポートされるようになりました。
AWS では今後もポスト量子暗号の導入と関連サービスのアップデートが継続して発表されていくと考えられます。
セッション概要に戻る
以上の量子コンピューティングと AWS の関連情報のまとめを調べた上で、セッション概要を再度確認しました。
Building Quantum-Safe Systems with Post-Quantum Cryptography on AWS (SEC404)
AWS の最新のポスト量子暗号機能を用いて、量子コンピューティング時代に向けたシステムを準備する方法を学びましょう。このハンズオンワークショップでは、AWS KMS と ML-DSA および ML-KEM を用いたポスト量子暗号鍵管理の実装、AWS プライベート認証局を用いたポスト量子暗号証明書のデプロイ、ハイブリッドポスト量子暗号 TLS ハンドシェイクの分析を行います。実践的な演習を通して、ポスト量子暗号アルゴリズムと従来のアルゴリズムのベンチマークを行い、ポスト量子暗号プロトコルを用いた安全なファイル転送を実装します。AWS サービスを用いたポスト量子暗号の実装に関する具体的な経験と、アプリケーションのパフォーマンスへの影響について理解を深めることができます。
Quantum Computing with Amazon Braket: From Exploration to Enterprise (CMP411)
Amazon Braket を通して、量子コンピューティングという新たな分野を探求しませんか。このセッションでは、AWSの量子コンピューティング戦略と最新のサービス機能の概要を説明し、組織が従来のコンピューティングワークロードと並行して量子アルゴリズムの実験を開始する方法を紹介します。上級技術リーダーやビジネスリーダーは、現在の量子コンピューティング機能、実験アプローチ、そして将来の量子コンピュータがHPC システムとどのように統合されるかについて、明確な理解を得ることができます。
※Google 翻訳によって元の英文を日本語化しています。
すると、太字で表示している単語がわかるようになっており、概要をある程度解読できるようになっていました!
また、調べた関連情報の内容が含まれており、興味も増えていました。
これらによって、聞きたいセッションを内容で選ぶことができる状態になっていました。
この経験から、AWS入門者でも特定のトピックでセッションを絞り込み、関連情報を調べることで、re:Invent を活用し、ほかのトピックの最新情報も得ることができると感じました!
まとめ
本記事では、AWS 最大級のイベント「re:Invent」の膨大なセッション数と専門性の高い内容について、AWS 入門者が “解読” した体験と量子コンピューティングに関する AWS の関連情報を紹介しました。「特定のトピックでセッションを限定する」「そのトピックについて AWS の関連情報を収集する」「セッション概要を読み直す」という 3 ステップで取り組みました。これらによって、AWS 入門者でも re:Invent の内容を掴み、興味を持って積極的に情報収集ができるようになると考えています。
量子コンピューティングを例に取り上げましたが、このアプローチは量子コンピューティングに限らず、AI や セキュリティ、ネットワークなど幅広いトピックにも応用可能であると考えています。
また、学習したいセッションの選択はトピックだけでなく、専門度合いやセッションの紹介記事も参考になります。
re:Invent は量子コンピューティング以外にも多くの革新技術・最新トレンドを網羅しているため、re:Invent を情報収集の場として活用していきたいと思います。
参考スライド
参考文献
[1] Amazon Web Services ブログ (2025)「AWS ポスト量子暗号への移行計画」. https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/aws-post-quantum-cryptography-migration-plan/, (2025/11/19).
[2] About Amazon Japan (2025)「AWSが新しい量子コンピューティングチップを発表」. https://www.aboutamazon.jp/news/aws/quantum-computing-aws-ocelot-chip, (2025/11/19).
[3] AWS (2025)「AWS KMS がポスト量子 ML-DSA デジタル署名のサポートを追加」. https://aws.amazon.com/jp/about-aws/whats-new/2025/06/aws-kms-post-quantum-ml-dsa-digital-signatures/, (2025/12/01).
[4] AWS (2025)「Amazon CloudFront においてポスト量子をサポートする TLS セキュリティポリシーがリリース」. https://aws.amazon.com/jp/about-aws/whats-new/2025/09/amazon-cloudfront-TLS-policy-post-quantum-support/, (2025/12/01).






