皆さんこんにちは! SCSK株式会社の安藤です。
チームで画面を見ながら原因を探しても、何が悪いのかわからない。そんなAWSのトラブルを、AIエージェント「Kiro」に任せたらどうなるのか。その答えを、実際に体験する機会がありました。
舞台は、2026年4月22日に社内向けに開催された「AWS GameDay in SCSK」です。チームに分かれて、実際のAWS環境で起きているトラブルの解決を競うイベントで、Kiroを使えるのが今回の特徴でした。
しかも前半は、Kiroの力を制限した状態でのスタートです。前半はKiroを相談相手にして人の力で解き、後半は制限を解いたKiroに任せる。同じ課題に、人とAIの両方で挑むことになりました。
この記事では、
- 力を制限されたKiroと、制限を解かれたKiroで何が変わったのか
- 人が解けなかったトラブルを、Kiroは解決できたのか
- AIエージェントに任せるとき、人は何をすべきか
について、当日の体験をもとにお届けします。なお、内容は2026年4月時点のKiroで体験したものです。ぜひご一読ください!
GameDayとは:チームで挑むセキュリティクエスト
(1) AWS GameDayと今回のシナリオ
AWS GameDayは、チームに分かれて実際のAWS環境上の課題(クエスト)に取り組み、そのスコアを競い合うゲーム形式のハンズオンイベントです。進行はAWSの方が担当してくださいました。
業務でAWSを使ってはいるものの、幅広いAWSの機能のうち、ごく一部を使っているに過ぎません。ゲーム感覚で学びや気づきを得られたらいいなと思ったのが、参加したきっかけです。
今回のテーマはセキュリティです。AWS環境で起きているセキュリティ上のトラブルに対応する、いくつかのクエストが用意されていました。なお、クエストの具体的な内容は、今後ほかのイベントで使われる可能性があるため、この記事では触れません。
会場には10チームが集まり、各チームでノートPCを広げて取り組みました。私たちのTeam 9も、ほかのチームと同じ条件でクエストに挑みます。

(画像は競技中の会場。スクリーンにはチームごとの座席表が映っています)
準備編:開始の合図があるまでボタンは押さない
(2) 3つの道具と、運営からの案内
各チームには、次の3つが用意されていました。
- AWSマネジメントコンソール:チームで1つのAWSアカウントを共有します。Webサービスなどはすでに構築済みで、リージョンはus-east-1です
- クエストダッシュボード:解くべきクエスト、達成状況、各チームのスコアを確認できます
- Cloud IDE(Kiro付き):ソースコードの編集に使います。Kiroエージェントも利用できます
ダッシュボードには「スコアイベント」(点数の増減の履歴)と「スコアボード」(全体の順位)があり、リアルタイムで状況が分かります。
運営の手順書には、気をつけるポイントも書かれていました。
- クエストは指示があるまで開始しないこと。クエストによっては、ボタンを押した瞬間から減点が始まるタイムアタック形式になっています
- クエストの日本語は機械翻訳のため、文字化けや分かりにくい表現があれば、言語を「English」に切り替えて原文を確認すること
ログインから環境確認までを全員で済ませたうえで、開始の合図を待つ流れでした。
そしてもう一つ、運営からは「今回の環境はこのイベントのために用意したものなので、設定をいじった結果壊してしまっても問題ありません」という案内もありました。とはいえ、自由にいじってよいと言われても、わざわざ壊すことはないよね、とこの時点では思っていました。この案内の本当の意味に気づくのは、後半に入ってからです。
前半戦:Kiroの真の力を封印
(3) カスタムエージェント「gameday」
今回の一番の特徴が、AIエージェントの扱いです。
利用できるAIエージェントはKiro(Kiro CLI)でした。ただし、そのままではなく、運営から配布された設定ファイル(README.mdとgameday.json)でカスタムエージェント「gameday」を作成し、役割を制限した状態で使います。
手順書には、次のように書かれていました。
本日のGamedayでは初めはカスタムエージェントを設定してKiroの真の力を封印します
設定ファイルに書かれていた主なルールは次のとおりです。
- 問題の分析と調査戦略の提案が役割で、AWSリソースへのアクセスは、ReadもWriteも禁止
- 調査にAWS CLIは使わない
- マネジメントコンソール上の操作を優先して案内する
- 初学者向けに、初めて出てくるサービスは簡単に説明する
- 回答はすべて日本語
つまり、AIは「何を調べればよいか」を一緒に考えてくれる相談役で、実際に画面を操作するのは自分たち、という設計です。手を動かして学ぶというGameDayの趣旨を守りつつ、AIを活用する体験ができる面白い仕組みだと感じました。
ちなみに、5つのルールのうち、Kiroの「力」を制限していたのは最初の2つです。AWSリソースの読み書きを禁止し、AWS CLIも使わせないことで、Kiroは環境の設定やログを自分で調べることも、修正することもできなくなります。残りの3つは、案内の仕方や説明の言葉づかいに関するルールです。
(4) 封印されたKiroと、チームの素の力
実際に使ってみると、封印状態のKiroは、AWSを操作して情報を集めたり、設定を修正したりすることはできません。ほかの生成AIと同じように、一般的な回答を返してくれる相談相手という印象でした。
そのため前半は、ほぼチームの素の力での勝負になります。
Team 9は3人のチームでしたが、正直なところ、3人の中で一番スキルがないのは自分だと感じていました。メンバーの中にAWSに詳しい方が一人いたので、前半はその方を中心にクエストを解いていきました。
素の力の差は、スコアボードにもはっきり表れました。
Team 3には、部内でもスキルが高いことで知られ、AWSの資格をすべて取得している方がいました。Kiroが封印されていた前半、トップを走っていたのはそのTeam 3です。チームの素の力がそのまま点数に表れていて、さすがだと思いました。
後半戦:解き放たれたKiroの真の力
(5) 原因不明のクエストをあっさり解決
後半に入ると、Kiroの封印が解かれました。前半の制限がなくなるということは、Kiroが自分でAWSリソースを読み書きし、AWS CLIも使えるようになるということです。前半は「何を調べればよいか」を教えてくれる相談役だったKiroが、自分で調べて、直すところまで実行する作業者に変わりました。ここからが驚きの連続でした。
印象に残っているのが、あるクエストでの出来事です。このクエストでは、ゲーム開始時点ですでに環境の一部が壊れた状態で用意されていて、それを直すことが課題でした。
前半は封印状態のKiroに相談しながら、チームで画面を見て原因を探しましたが、何が悪いのかは最後までわかりませんでした。
ところが後半、封印が解けたKiroに任せてみると、あっさりと解消してしまいました。チームで悩んだ時間はなんだったのかと思うほどでした。
ただ、正直に言うと、このとき確認できたのは「クエストを達成した」という結果だけでした。Kiroが何を修正したのかは、確認していません。GameDayでは経過時間も採点に影響するため、そのときはクエストをクリアすることだけに集中していたのです。
結果は出たけれど、その中身は見ていない。この体験が、後で書く「責任をとるのは人」という考えにつながっていきます。
その後のクエストも、指示を出せばKiroが自分で考え、実行まで進めてくれます。Team 9も後半はメンバーで分担し、それぞれKiroを使ってクエストに取り組みました。
スコアボードの様子も一変しました。ほかのチームが次々とクエストを解決して点数を伸ばし、前半トップだったTeam 3は追い越されていきます。
自由に壊してよい環境では、Kiroは本当に強かった。前半はスキルの差がそのまま点差になっていたのに、後半はその差がKiroによって埋められていったのです。
(6) Amazon Qの頃との違いと、責任をとるのは人
昨年、Amazon Q CLIを使ってゲームを作る企画に挑戦し、ブログにまとめました。
Amazon Qで作るAIダンジョン探索型RPG ― 3日間ゲームを作ってみた
このときは、具体的な指示を出さないと思いどおりのものができず、追加で指示を出すたびにバグが連鎖して苦労しました。それから1年も経たないうちに、AIエージェントがここまで進化したことに本当に驚きました。
ただ、AIは間違えることもあります。そして、AIが間違えて環境を壊してしまっても、AIが責任をとることはありません。最後に責任をとるのは人です。
今回のクエストは、ゲームだからこそ「クエスト達成」の判定だけで済みました。でも、お客様の本番環境なら、それでは足りません。表面上は動いているように見えても、本当に正しく直ったのか、ほかに影響が出ていないのかは、変更内容を見なければわからないからです。
だからといって、AIに任せられないわけではありません。あれだけのスピードで原因を見つけて直してくれるのですから、任せない手はないと思います。大事なのは、任せた後に、AIが何を変更したのかを人が確認し、説明できる状態にしてから受け入れることです。今回の私たちは、そこを時間の制約で省略しました。本番環境では、そこを省略しないことが「責任をとる」ということなのだと感じました。
そう考えると、冒頭の「環境を壊しても問題ありません」という案内は、Kiroを思い切り自由に使ってもらうためのものだったのだろうと、後から腑に落ちました。
結果発表:わずか1,010点差の接戦
(7) 最終スコア
結果発表は、司会のAWSの方がカラフルなカツラとサングラスで登場し、会場は大いに盛り上がりました。
全10チームの最終スコアは次のとおりです(順位はスコアボードの表示どおり)。
| 順位 | チーム | スコア |
|---|---|---|
| 1位 | Team 5 | 567,570 |
| 2位 | Team 6 / Team 7(同点) | 566,560 |
| 3位 | Team 1 | 561,630 |
| 4位 | Team 3 | 557,910 |
| 5位 | Team 9(私たちのチーム) | 490,610 |
| 6位 | Team 8 | 409,690 |
| 7位 | Team 4 | 407,850 |
| 8位 | Team 10 | 334,170 |
| 9位 | Team 2 | 269,030 |
1位と2位の差はわずか1,010点、2位が2チーム並ぶ接戦でした。私たちのTeam 9は5位でした。
前半トップだったTeam 3は、最終的に4位。上位4チームの差は1万点にも満たず、Kiroの封印が解けた後半に、各チームが一気に差を詰めた結果となりました。
おわりに:AIの時代だからこそ、自分の力を磨く
今回のGameDayで感じたことは次のとおりです。
- 実際のAWS環境で課題に取り組むため、座学では得にくい経験ができる
- チームで状況を共有しながら進めるので、一人では気づけない視点が得られる
- AIエージェントに制限をかけることで、「AIと一緒に考えつつ、自分の手で解決する」という学び方を体験できた
- 制限を外したKiroは、人が解けなかった課題も短時間で解決してしまうほど進化していた
- 一方で、AIに任せた結果を確認し、説明できる状態にするのは人の役割だと改めて感じた
知識やスキルの差は、AIの登場によって埋められつつあるのかもしれません。前半トップだったTeam 3が後半に追い越されたのは、その表れだと感じました。
それでも、AIが何をしたのかを確かめずに受け入れる選択は、仕事ではとれません。そして、AIの変更内容を確かめるためには、結局、自分自身の知識が必要です。そもそも、実際の現場ではKiroのようなAIエージェントを自由に使える環境のほうが少ないはずです。
今回は、クエストの前半で自分のスキル不足を痛感しました。まだ取得していないAWSの資格の勉強を進めてスキルアップを図り、次回また挑戦したいと思います。
そんな気持ちにさせてくれたGameDayでした。運営のAWSの皆さん、一緒に戦ったチームの皆さん、ありがとうございました。機会があれば、ぜひ皆さんも参加してみてください。
読んでくださって、ありがとうございました。



