皆さんこんにちは、SCSKの木澤です。
私はSCSKにて以下のロールを担当しており、僭越ながら今年よりAPN Ambassadorに認定頂いております。
- AWSアーキテクト
各種案件でのアーキテクチャ相談への対応 - プロモーション活動
社内外向けウェビナー等の 企画・運営・登壇 - 開発者支援活動
主に社内のエンジニアに対する情報提供やコミュニティ活動等
今回はこの中でも特徴的な活動である、私が進めている開発者支援活動について ご紹介させていただければと思います。
SCSKのクラウドサービス「USiZE」の紹介
すみませんが 先に簡単に宣伝させて下さい。
SCSKでは USiZE の名称でクラウドサービスを提供しております。
現在では主要なものとして以下のラインアップがあります。
- SCSKの堅牢なデータセンターで提供されるマネージドクラウド : USiZEシェアードモデル
- パブリッククラウドの提供 : USiZEパブリッククラウドモデル(AWS・Azure・Google Cloud)
そして特徴としては、以下が挙げられます。
- SIerならではの総合力で、アプリケーション開発~システム運用まで全てご提供できること
- お客様のご要件に合わせ最適なプラットフォームをコーディネートできること
- 特に運用に関するサービス/体制が充実しており、お任せ頂けること
実はUSiZEの歴史は古く、サービス開始は2004年まで遡ります。
そして AWSの提供も比較的早くから行っており、2012年から開始 しております。
最近は各種案件でのプラットフォーム選択においてデフォルトでAWSが選択肢に入っているかなといった肌感覚であり、社内での浸透が進んでいることを実感しています。
SIerのクラウドが認知されるためには
しかし皆さんは、SCSKのようなSIerに「クラウドに強い」とのイメージを持たれている方は少ないのではないでしょうか。
まさに我々も知名度が低いことを課題だと考えており、市場認知を高める努力を行う必要があると考えています。
なぜ知名度が低いのか、それには大企業であるSIerならではの課題があります。
SCSKの場合、お客様へのクラウドの提供形態は一般的には以下のようになっています。
トータルではお客様やシステム個別にベストであることが判断基準になりますので、 インフラ技術は脇役になりがち です。またこの体制ではクラウド専門部署のエンジニアが営業等で外部に露出することが少なく 技術力のアピールが乏しく なり、この辺りが原因と考えています。
また、各AWS案件への対応においてもEC2・RDS主体の構成では②・③にてWell-Architectedフレームワークに準じた適切なインフラ構成が選定できますが、クラウドネイティブのシステム構成を選定するには①にてその判断をする必要が生じます。
①においてもAWSの基本知識を得た上で、全社的にお客様要件に合わせた適切な判断が必要になるわけです。
大企業であるSIerにおいては、①②③全体をクラウド(AWS)に最適化するにはどうしても時間が掛かります。
SCSKにおいては、②までの最適化は概ね完了しており、①へのイネーブルメントの活動を鋭意推進しております。
SCSK社内における開発者支援(DevRel)活動
さて、Developer Relations (DevRel)という言葉をご存知でしょうか?
日本語では「開発者向け共創マーケティング」と訳されているかと思います。
元々はGAFAMを中心としたグローバル企業で培われた方式論を体系化したもので、自社製品・サービスと開発者の良好な関係性を築くためのマーケティング施策となります。彼らのサービスはいくら良いものを提供したとしても社外の開発者に使ってもらわなければ意味がない訳で、いかに社外の開発者に「心地よく」使ってもらうのか考えているということです。
この言葉を知った2019年当時、私個人の認識としては
SCSKにおいてもサービス提供型モデルが増えつつあるので、
今後このような考えも必要になるだろうなー
程度の感想だったのですが、2020年度からAWS代理店チームにジョインして状況を考慮するに、社内のAWSディベロッパーへの支援活動もDevRelではないか と考えるようになりました。
DevRelのフレームワーク「3C」などと言われていますが
- Code : プロダクトに関するコード・チュートリアル
- Contents : 主にオンラインでの情報発信
- Community : 開発者同士を結び付け、アイディアを交換し主体的に学習するハブ
社内における活動も このフレームワークに従って進めており、2021/12現在では以下の施策を行っています。
さて「AWSに強い」SCSKへの取り組みについて、1つ1つ経緯や成果について取り上げていきたいと思います。
開発者支援活動 — Code/Contents
AWSよろず相談会 (2020/8~)
まずは 「AWSよろず相談会」を2020年8月から開始しました。
AWSのパートナーSAの方やSCSK社内からも有識者が参加し、事前に参加者から問い合わせがあった質問について回答やディスカッションを行うスタイルで行っておりますが、背景としてSCSKならではの課題があります。
SCSKにおいては「分室」と呼ばれる、お客様先に常駐して業務を行っているメンバーが多数在籍しています。
そして分室メンバーにおいてもAWSでの開発・運用に携わることが増えておりますが、このAWSアカウントは (お客様直接契約など) SCSK経由のアカウント提供ではないケースが多く、そのためAWSサポートが使いにくく困るケースが増えておりました。
そうした方々の質問にも対応することで、全社としてのAWS対応力を上げようとの意図で始めた次第です。
初期の頃は初歩的な質問も多かったのですが、最近ではレベルの高い質問も多く挙がっており、AWSの社内への浸透を実感として感じています。
またAWSサポートでは解決が難しい 上流工程でのアーキテクチャ選定支援にも有用 なものとなっています。
参加者からの満足度も非常に高く、SCSK社内における “Why AWS” の判断基準の1つになってきたと感じています。
AWSメールマガジン (2020/10~)
続いて社内のAWS担当者や希望者に対して AWSに関わる最新情報を配信する「AWSメールマガジン」を刊行 しました。
背景としては 新しいAWSサービスを用いたベネフィットをいち早く案件に適用しお客様に届けて欲しい という想いがあります。
AWSの担当者様からは定期的にアップデート等の情報を頂戴しますが、従来はそれをタイムリーに展開することができていませんでした。またAWS専門部署としての最新施策も併せて社内に共有したいと思い始めたものとなります。
そのため、AWS担当者様から頂戴したAWSサービスに関する最新情報と合わせて
- SCSK社内担当者(持ち回り)によるコラム
- 各種イベント情報
- AWSよろず相談会での相談内容PickUp
などを付加し読み応えのある内容としています。
最近では、ありがたいことにAWSやSCSKにて行っている施策の周知もできつつあると感じています。
AWSアップデートセミナー (2021/3~)
そして 毎月のAWSアップデート情報を解説する「AWSアップデートセミナー」を、今年3月から開始しました。
AWSのアップデート情報はメールマガジンでもお知らせしておりますが、案件への適用を通じてお客様にデリバリーするためには、より深い解説が必要であろうとの背景になります。
本来であればエンジニア自らがアンテナを張ってAWSやJAWS-UG主催のイベントに参加し情報収集に努めて欲しいところではありますが、毎月のアップデートをギュッと1時間に纏めてお知らせするのも効率的で良いかと思っています。
なお主要なアップデートの内容説明はAWSのパートナーSAの方にお願いしておりますが、それに合わせて社内の担当者(主に私)にてAWS主要サービスのおさらいや、関連する最近のアップデート内容、その他トピックスをまとめてお話しすることで、AWSに関する情報を社内に浸透させる目的も担っています。
お陰様で現在は毎月多数の参加者がある人気イベントになっており、今後も継続していきたいと考えております。
AWS知財マーケット (2021/9~)
さてAWSのデリバリーを行っているAPNパートナーにおいて、DevRelの「Code」は何でしょうか?
私としては、IaCを司るCloudFormationのテンプレートや、各種ドキュメント・ノウハウではないかと考えています。
また、これらの「Code」は各担当者に蓄えられていては意味が無く、いかに共有されるのかが鍵 になると考えています。
SCSKにおいては IaaS(AWS)と運用やDevOpsの基盤、ローコード開発ツールを組み合わせた自社開発のプラットフォームである、S-Cred+プラットフォームをご提供しておりますが、そのコンセプトの1つとして「知財の蓄積/活用」があり、これは正に上記の視点となります。
そこで S-Cred+の担当者と共同で、「AWS知財マーケット」を立ち上げました。
なおAWS知財マーケットでは上記の知財共有という意味の他、AWSに関する社内ポータル との位置づけにしました。
AWSに関する情報は大量であるため散在してしまい、なかなか社内の担当者にリーチできていないという課題がありました。
- 営業資料(サービス紹介、契約書式、その他関連情報)
- 技術情報(共有ナレッジ)
- トレーニング情報(自社企画のもの、AWS主催のもの、e-learning)
- DevRelコンテンツ(アップデート情報、メルマガ、よろず相談会)
- イベント情報
- AWS利用に関してのFAQ
それらの情報ポータルとして一元的に発信することで、担当者自らが各種情報を得やすくなったと考えています。
効果の程はこれからですが、これからもサイトを拡充し情報発信に心がけて行ければと思っています。
開発者支援活動 — Community
ここからは主に業務外で行っている社内のコミュニティ活動について語りたいと思います。
私はAWSやクラウドに関する社内コミュニティ活動を行っております。
TechHarmony勉強会 (2017/6~)
2017年より始めたセミナー形式の勉強会となり、外部の方による講演や社内の活動の発表、また参加者有志によるライトニングトークを交えたイベントとなっています。
立ち上げた経緯としては、部署内での勉強会を「良いことを話しているのだから全社イベントにしよう」と昇華させたということなのですが、現在はイベントの目的として以下と設定しています。
- 最新トレンドを社内に取り入れる
- 社内エンジニア同士の交流を促進する
- 若手エンジニアに発表(成長)の機会を提供する
そして今や毎回100名を超える参加者がある人気イベントとなりました。
直近のAWSに関するイベントレポートを2本ご紹介させていただきます。
TechHarmony AWSもくもく会 (2021/6~)
さて勉強会の運営は軌道に乗ったものの、徐々に課題を感じるようになりました。
それは「セミナー形式のイベントだけではエンジニア育成には繋がっていないのでは?」ということです。
私自身の実体験を踏まえ、クラウドの学習には 手を動かして身につけること、またアウトプットする過程で知識を整理することが大事ではないか と考えるようになり、コミュニティベースでの育成プランを考えるようになりました。これを私はディベロッパージャーニーと定義しています。
そうして今年より2つの施策を立ち上げることになりました。
まずご紹介するのが TechHarmony AWSもくもく会 です。
これは時間外に 参加者が「もくもく」する場を提供する。それをAWSのパートナーSAの方やクラウド専門部署(主に私)がサポートする というイベントで、月次で開催しております。
参加者には予めAWSやコミュニティーが提供するハンズオンマニュアルを紹介して当日「何をやるか」考えてから参加頂く、必ずしも初学者にはハードルは低くない設定としています。しかしそれでも最近は草の根で認知が広がってきたようで、意識高い新人社員なども参加しており嬉しいです。
SCSKでも若手社員が大変優秀であることに驚いていますが、SIerは規模が大きいため、どうしても自分のやりたいことができる部署に配属されるとは限りません。普段業務では扱わないけどAWSに興味ある・触ってスキルアップしたい、という層へのサポートを行い、モチベーションを高めスキルアップへ貢献できればと考えております。
また、各部署の教育担当者とも想いが一致し、本施策を紹介頂く流れもできています。
社内で注目を集めており担当者として嬉しい限りです。
TechHarmony(エンジニアブログ) (2021/3~)
そして最後のピースが本サイト、エンジニアブログである「TechHarmony」です。
今年3月から公開しております。
ここまでご覧になった方であればお解りになると思いますが、本サイトは2つの目的を持っています。
- SCSKのクラウド関連技術及びエンジニアの社外への露出を高め、市場認知を高めること
- アウトプットする過程で知識を整理する、成長の場を提供すること
今年立ち上げたばかりのサイトであること、また上記の背景であるため、成熟するには相当の期間が掛かると思っています。
また他社様のブログサイトと比べると、まだまだ質・量とも貧弱ではありますが、成長途中であると温かく見守って頂ければと考えております。
このサイクルに「巻き込まれる」ことで、一人前のAWSエンジニアになるための「近道」であると社内で啓蒙活動を行っておりますが、実際に若くして成長を遂げているAWSエンジニアも登場しており、今後の展開が楽しみです。
最後に
さて、SIerにおいてのクラウドサービス展開の課題と、それを解決するための各種施策についてご紹介させていただきました。
ここで今年プレスリリースとして発表した、職域接種システムの話をしたいと思います。
AWS Amplifyを中心としたクラウドネイティブのアーキテクチャを用いて、弊社内の職域接種予約システムを構築しました。
この開発は 主に①フロント部署 にて担当し、適宜 ③クラウド専門部署 にて支援する体制で実施しました。
社内全体がクラウドに最適な体制に変革した際にはこのような事例が多数登場し、お客様に喜ばれるようになることを期待しておりますし、早くそうなるように私も尽力したいと考えております。
またコミュニティベースのAWSエンジニア育成プランを通じ、技術力・アウトプット共に優れたエンジニアが弊社から多数現われ、私が APN Ambassadorを引退できる日が来ることを楽しみにしています。
最後に、本記事でご紹介した各種施策にご協力いただいております、AWSの皆様に感謝の意を表したいと思います。
ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします!