vCLSについて調べてみた

本記事は 新人ブログマラソン2024 の記事です

お疲れ様です。USiZEサービス部第三課の織田です。

今回はvCLSについてまとめてみました。
vCLSとは、私が仕事でよく利用するVMwareの製品の一つである、vSphereの機能の一つです。
vCLSが有効であるとどんないいことがあるのか、無効にするとどのような影響があるのか、を中心に調べてまとめました。

 

vCLSとは

初めにvSphere関連の用語を簡単に説明します。

用語 説明
仮想マシン ESXiホスト上で動作する仮想のコンピュータです。VM(Virtual Machine)と表記されることもあります。
ESXiホスト ESXiがOSとしてインストールされた物理的なコンピュータです。
仮想マシンはESXiホストのリソースを使用して稼働します。
クラスタ 複数のESXiホストの管理単位です。各ESXiホストのリソースを管理します。
vCenter vSphere環境全体を管理する中央管理ツールです。

 ※以下はイメージ図です。わかりやすくするため、かなり簡略化しています。

 

vSphereのvCLS (vSphere Cluster Services) とは?

今回紹介するvCLS (vSphere Cluster Services) は、vSphere 7.0 Update 1以降で導入されたクラスタの機能です。※参考サイト1,参考サイト2

vCLS機能を有効にすると、小さな仮想マシンが作成され、クラスタのリソース管理などを補助します。
以下はイメージ図です。

図のように、通常の仮想マシン(VM)よりも、小さな仮想マシンが作成されます。

参考サイト1:https://techdocs.broadcom.com/jp/ja/vmware-cis/vsphere/vsphere/8-0/vsphere-resource-management-8-0/vsphere-cluster-services-vcls.html(vSphereクラスタサービス)
参考サイト2:https://knowledge.broadcom.com/external/article?legacyId=80472(vSphere Cluster Services (vCLS) in vSphere 7.0 Update 1 and newer versions)

vCLSの主な役割

クラスタの健全性維持

vCLSはクラスタ内のホストが適切に機能しているかを監視し、クラスタ管理機能を維持します。
つまり、vSphere環境全体を管理するvCenterが一時的に利用できない場合でも、クラスタの一部機能が継続されます。

vCLSはvCenterが一時的に停止した際に、クラスタの健全性を代わりに維持する機能。

具体的な機能については、以下で説明します。

 

DRS (Distributed Resource Scheduler) の継続運用

DRSとは、「クラスタ内の仮想マシンのリソース配分を最適化する機能」です。
以下はイメージ図です。

図の説明をします。

  1. はじめは左のESXiホストにVM(仮想マシン)が集中しており、各VMのリソース使用量が同じであるとした場合、各ESXiホストで使用されるリソースに不均衡が生じます。
  2. DRSによって、各ESXiホストのリソース消費が均等になるようにVMの再配置が行われます。(この時VMはvMotionという機能によって無停止でホストを移動させられます。
    ※vMotionはVMwareの用語です。一般的には、仮想マシンを無停止で別ホストに移動することをライブマイグレーションといいます。

なお、DRSはvCLSの登場と同時に、DRSの動作のためにはvCLSが有効であることが必須となっています。※参考サイト3

DRSによってクラスタのリソースを適切に配分することが可能となる。
DRSの動作にはvCLSが必須。(vSphere 7.0 Update 1以降)※参考サイト3

参考サイト3:https://techdocs.broadcom.com/jp/ja/vmware-cis/vsphere/vsphere/8-0/vsphere-resource-management-8-0/creating-a-drs-cluster.html#GUID-CAF3CDC4-469F-4FA4-ACFD-24F5F36847EA-en(DRS クラスタの要件)
その他参考サイト:https://techdocs.broadcom.com/jp/ja/vmware-cis/vsphere/vsphere/8-0/vsphere-resource-management-8-0/creating-a-drs-cluster.html(vSphere DRSクラスタの作成)

 

HA (High Availability) とは独立

HAとは、「クラスタ内のESXiホスト停止時に、停止したESXiホストで稼働していた仮想マシンを別ホストで自動的に再起動する機能」です。
以下はイメージ図です。

図の説明をします。

  1. はじめに3台のESXiホストそれぞれで3台づつVM(仮想マシン)が稼働している状況で、一番右のESXiホストが突発的に何らかの障害で停止したとします。
  2. この時、HAの機能によってホストの停止を検知し、停止したESXiホストで稼働していた3台のVMを残り2台のESXiホスト上で再起動します。

HAはDRSとは異なり、動作のためにvCLSは必須というわけではありません。
ただ、VMを再起動する際に、どのESXiホストで起動するかを適切に選択するためには、DRSの動作が必要になっています。※参考サイト4

HAによってESXiホストの障害発生時にVMが自動で再起動される。
HAの最適な動作のためにはDRSが必須であり、DRSの動作のためにはvCLSが必須。※参考サイト4

参考サイト4:https://techdocs.broadcom.com/jp/ja/vmware-cis/vsphere/vsphere/8-0/vsphere-resource-management-8-0/vsphere-cluster-services-vcls.html#GUID-F98C3C93-875D-4570-852B-37A38878CE0F-en(クラスタの退避モードへの切り替え)
その他参考サイト:https://techdocs.broadcom.com/jp/ja/vmware-cis/vsphere/vsphere/8-0/vsphere-availability/creating-and-using-vsphere-ha-clusters/vsphere-ha-interoperability/using-vmware-ha-and-drs-together.html(vSphere HA と DRS の併用)

 

vCLSの構成

ここではvCLSの実態について説明します。
最初に述べたようにvCLSは仮想マシンとして稼働しています。

vCLS仮想マシンの数

以下はイメージ図です。

図を説明します。

  • Cluster①、②:3台以上のESXiホストによって構成されるクラスタでは、vCLS VM(vCLS仮想マシン)は3台以上存在し、それぞれ別々のホストに配置されます。
  • Cluster③、④:クラスタのESXiホストの台数が3台より少ない場合は、ホストと同じ台数のvCLS VMが存在し、同じくそれぞれが別のホストに配置されます。

※vCLS仮想マシンは、手動の移動や、HAによって一部のESXiホストに偏ることがあります。
その対策として、3分ごとにチェックが行われ、自動的に複数のESXiホストに分散配置される仕組み(非アフィニティポリシー)があります。※参考サイト1

vCLS仮想マシンの数はクラスタのESXiホストの台数によって異なる。

 

vCLS仮想マシンのスペック

vCLS仮想マシンは管理のためのVM(仮想マシン)であるため、ESXiホストのリソースを必要以上に使用しないために非常に軽量です。
具体的なスペックは以下の表のとおりです。※参考サイト5

プロパティ サイズ
CPU 1 vCPU
メモリ 128 MB
ハードディスク 2 GB
VMDKサイズ 245 MB(シンディスク)
データストア上のストレージ 480 MB(シンディスク)

参考サイト5:https://techdocs.broadcom.com/jp/ja/vmware-cis/vsphere/vsphere/8-0/vsphere-resource-management-8-0/vsphere-cluster-services-vcls.html#GUID-E39875F2-2DA6-4592-A220-6014F54858D3-en(vSphere クラスタ サービスの監視)

 

 

vCLSの今後

ここでは新しいvCLSである、「組み込みvCLS」について説明いたします。

vCLSには現在、「外部vCLS」と「組み込みvCLS」の2種類があります。
外部vCLSとは、これまでに説明してきたvSphere 7.0 Update 1以降で導入された従来のvCLSのことです。
組み込みvCLSとは、vSphere 8.0 Update 3以降で導入された新しいvCLSのことです。
どちらを使用するかはvCenterのバージョンによって決定されます。

組み込みvCLSは従来の仮想化による管理ではなく、コンテナとして管理されるようになり、以前にもましてリソースの消費量が抑えられています。※参考サイト6
リソース消費の低下には、以下の2つの組み込みvCLSの特徴が関わってきます。

  • ESXiホストのメモリ内で直接実行される
  • メモリ内で実行されるため、ストレージの占有量がゼロ

その他の「外部vCLS」と「組み込みvCLS」の変更点としては、

  • クラスタ当たりのvCLS仮想マシンの数が2つ。単一のESXiホストによって構成されるクラスタの場合のみ、vCLS仮想マシンの数が1つ。

などがあります。

vSphere 8.0 Update 3からは「組み込みvCLS」という新しいvCLSが導入されている。

参考サイト6:https://blogs.vmware.com/vmware-japan/2024/12/vmware-vsphere-8-update-3-newfeatures.html(VMware vSphere 8 Update 3 の新機能 – VMware Japan Blog)

 

まとめ

今回の内容をまとめると以下の通りです。

  • vCLSはvCenterが一時的に停止した際に、クラスタの健全性を代わりに維持する機能。
  • DRSによってクラスタのリソースを適切に配分することが可能となる。DRSの動作にはvCLSが必須。
  • HAによってESXiホストの障害発生時にVMが自動で再起動される。
    HAの最適な動作のためにはDRSが必須であり、DRSの動作のためにはvCLSが必須。
  • vCLS仮想マシンの数はクラスタのESXiホストの台数によって異なる。
  • vSphere 8.0 Update 3からは「組み込みvCLS」という新しいvCLSが導入されている。

今回の記事の執筆にあたりvCLSについて初めて知ったことも多数あるので、仕事に生かしていきたいと思います!

著者について

大阪で働く2024年入社の新人です。
皆さん、よろしくお願いします!

織田康太郎をフォローする

クラウドに強いによるエンジニアブログです。

SCSKでは、自社クラウドと3大メガクラウドの強みを活かし、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドのソリューションを展開しています。業界の深い理解をもとに、お客様の業務要件に最適なアーキテクチャをご提案いたします。サービスサイトでは、お客様のDX推進をワンストップで支援するサービスの詳細や導入事例を紹介しています。

その他技術ナレッジ
シェアする
タイトルとURLをコピーしました