「侵害は避けられない」という前提から始まる、AI時代のネットワーク・レジリエンス

レジリエンス(強靭性、耐性)とは、ITシステムが障害、災害、サイバー攻撃を受けた場合でも、機能を維持し、被害を最小限に抑えて、迅速に回復する能力のことですが、サイバーセキュリティにおける「サイバーレジリエンス」、中でも、特にネットワークにおける「ネットワーク・レジリエンス」について解説しています。

はじめに 防御の限界と「レジリエンス」へのパラダイムシフト

現代のサイバーセキュリティにおいて、私たちが直視しなければならない「不都合な真実」があります。それは、どれほど堅牢な境界防御を築き、最新のEDRやSEIMやSOARを配備したとしても、侵害を100%防ぐことは不可能だという事実です。ゼロトラストの本質である「侵害は避けられない(Assume Breach)」という考え方は、もはや議論の余地がない生存戦略の前提となっています。

そこで今、真のリーダーに求められているのが、単なる「防御」から「サイバーレジリエンス」へのパラダイムシフトです。

これまでのセキュリティは「いかに侵入を阻止するか」に執着してきました。しかし、攻撃者が数秒単位で動き、最新のAIを駆使して並列攻撃を仕掛けてくる現代において、人間の対応(応答)を待つ防御モデルはすでに破綻しています。SOCやインシデントレスポンス(またはインシデントハンドリング)と言った人間の検知・対応サイクルの構造的な限界を迎えています。攻撃者がAIを武器に秒単位で環境を駆け抜けるのに対し、人間がアラートを分析し、判断し、手動で遮断を行う「反応的なワークフロー」では、初動の遅れを埋めることはできません。
レジリエンス(強靭性)とは、攻撃を受けている最中でもビジネスの稼働時間(アップタイム)を保護し、それを客観的に証明できる能力を指します。サイバーレジリエンスとは、セキュリティ侵害が発生したとしても、その影響をアーキテクチャによって自動的に制限し、重要なビジネス運営を継続し、それを証明できる能力を指します。「守り切る」ことから「被害を構造的に封じ込め、稼働を止めない」ことへ評価軸を移すことは、企業の信頼性を担保するための唯一の持続的な優位性となるのです。

理想論を語る時期は終わりました。まず最初は、自社のネットワークが現在どのような「レジリエンスの成熟度」にあるのか、現実を直視することから始めましょう。

 

ネットワーク・レジリエンスの5段階

闇雲なセキュリティ投資は、時として運用の複雑さを増すだけの結果に終わります。ネットワーク・レジリエンスで戦略的な投資を行うためには、以下の5段階のフレームワークを用いて自社の立ち位置を正確にベンチマークすることが不可欠です。

  • ステージ1 – フラット&ブラインド: 周囲のみを防御し、内部に統制が存在しない状態。東西(East-We)方向のトラフィックに対する可視性は皆無です。
  • ステージ2 – アラート・ヘビー(警戒心が強い): EDRやSIEMなどのツールはありますが、VLANやACLといった静的なツールに頼っており、封じ込める構造がありません。管理不能なアラート量に現場が悲鳴を上げている(アラート疲れ)段階です。
  • ステージ3 – 早期封じ込め: セグメンテーションは導入されていますが、ポリシー設定は手動。サービスアカウントがマッピングされていないことが多く、運用のドリフト(劣化)が始まっています。
  • ステージ4 – 自動封じ込め: アイデンティティを認識するセグメンテーションにより、不正な横方向への移動が自動的にブロックされる状態。
  • ステージ5 – 自己防衛: 適応型コントロールがアーキテクチャに組み込まれ、環境の変化に応じてポリシーが自ら修正される、実証可能なレジリエンスの完成形です。

多くの組織がステージ2から3の間で停滞しています。この停滞の理由をビジネスの現実を交えて次のように鋭く分析しています。

まず、開発者は『すべてにアクセスできなければ、これを成し遂げられない』と言います。一時的に穴を開けるだけです。そして、ここに一時的な穴、あそこに一時的な穴。そうして、ほとんどの組織はこうしてステージ2と3の間に陥るのです。

さらに、運用者のスピードを優先して開けられた「一時的な穴」も累積し、やがてセキュリティを形骸化させます。このリスクを克服するには、攻撃者が利用する「経路」そのものを構造的に断つ必要があるのです。

 

1つのエンドポイントから「85%」が露出する衝撃の事実

IT資産の重要性を把握するだけでは、現代の脅威には太刀打ちできません。真のネットワーク・レジリエンスを構築するには、その資産に至る「道筋(パス)」がいかに悪用可能かを可視化しなければなりません。

私たちが直視すべきデータがあります。「侵害された単一のエンドポイントは、環境全体の85%を直接露出させる」という事実です。さらに、企業環境の12.2%には、ユーザーからサーバーへと至る特権的な「管理経路」が露出しており、これは攻撃者にとってクラウンジュエル(重要資産)への直通チケット、いわば「宝の地図」となっています。

特に警戒すべきは、脅威活動の71%がSMB、RDP、WinRM、RPCといった特権プロトコルを悪用して行われている点です。ここで重要な3つの概念を整理しましょう。

  • 攻撃面(Surface): 侵入される可能性のあるすべての接点(ポート、デバイス、アイデンティティ)。
  • 攻撃ベクター(Vector): 侵入の手法(フィッシング、認証情報の盗難など)。
  • 攻撃経路(Path): 初期侵入後、環境内を移動して重要資産へ到達するルート。

レジリエンスの鍵は「経路距離(Path Distance)」の拡大にあります。入り口を塞ぐだけでなく、資産に至る障壁や認証境界を構造的に増やすことで、攻撃者の爆発半径(Blast Radius)を最小限に抑え込むことができるのです。

 

自己防衛型アーキテクチャへの4ステップ

人間の対応速度を超えた攻撃に対し、私たちは「自動封じ込め」をアーキテクチャそのものに組み込まなければなりません。数ヶ月以内に自己防衛の状態へ到達するためのロードマップを提示します。

  1. 全資産・アイデンティティ・接続の自動マッピング 手動の監査を捨て、自動化ツールですべての資産と接続パターンをリアルタイムに可視化します。これにより、従来の死角であった東西(East-West)トラフィックの「見える化」を実現します。
  2. 暗黙の信頼を「決定論的なポリシー」に置き換える 実際の行動ベースラインに基づき、決定論的かつ「ヒューマン・オン・ザ・ループ(人間が制御権を持つ)」の自動化エンジンを用いて、業務を止めずに不正な移動のみを正確にロックするポリシーを生成します。
  3. 特権的内部経路に対するネットワーク層MFAの強制 攻撃の71%を占めるSMB/RDPなどの経路に対し、ジャストインタイム(Just-In-Time:JIT)認証を導入します。攻撃者が立ち往生する一方で、正当な作業は継続できる環境を構築します。
  4. ネットワーク変更に伴うポリシー更新の自動化 新しい資産や接続が登場しても、決定論的な自動化によりポリシーを即座に適応させます。手動の例外設定によるセキュリティの劣化を根絶します。

Zero Networks のような次世代マイクロセグメンテーションソリューションは、このロードマップを適用することで、90日以内に91%以上のセグメンテーション・カバレッジを実現することができます。「手動による例外設定」という弱点を排除し、JIT認証や決定論的な自動化を採用することこそが、運用の複雑さを増やさずにレジリエンスを極大化させる鍵なのです。

 

まとめ デフォルトで「閉じた」ネットワークが、ビジネスの自由を担保する

「自動封じ込め」は、インシデント発生後の「付け足し」ではありません。それは最初からアーキテクチャの根幹に組み込まれているべき設計思想です。

改めてお問いかけします。「あなたのネットワークは、攻撃者が数秒で動く現代において、いまだに人間の対応サイクルを待ち続けてはいませんか?」

これからの時代、ネットワークはデフォルトで「閉じている」べきです。アイデンティティに基づき、必要な時だけ動的に「開く」。この「混乱を最小限に抑えるための環境設計(Design your environment to limit disruption)」という思想こそが、予期せぬ侵害に直面してもビジネスを継続させるための唯一の答えです。

セキュリティは制限ではありません。攻撃を構造的に封じ込めることで、企業が安心して本来の活動に邁進できる「ビジネスの自由」を担保するための、最も強力な基盤なのです。

SCSKでは、ガートナーのハイプサイクルで「今後2年以内に主流化し、効果が極めて高い」と位置づけられ、CISAガイドラインでもゼロトラスト基盤として推奨されるマイクロセグメンテーションとして、次世代マイクロセグメンテーション Zero Networks を取り扱っております。特許技術であるネットワーク層MFAによる管理ポートの閉鎖を始めとし、レガシーマイクロセグメンテーションとは異なる完全エージェントレス型、通信の可視化からAIによるポリシー自動生成などが特徴となります。ネットワーク・レジリエンスの「封じ込め」アーキテクチャを検討されたい方は、ぜひお問い合わせください。

また、2026年9月17日に、次世代マイクロセグメンテーション Zero Networks と、マイクロセグメンテーションと組み合わせることで完全なゼロトラストを実現するSASE(Secure Access Service Edge、サッシー)、これまでのレガシーなエンドポイントセキュリティとは異なり、AIのディープラーニング(深層学習)を利用した高い検知率を誇る次世代エンドポイントソリューション、そして、万が一攻撃者に侵入を許した際、真っ先に狙われるバックアップデータを安全に保護し、確実な復旧を早期に実現するためのゼロトラストデータ保護ソリューションなど、フロンティアAI時代のゼロトラスト実現に向けたベスト・オブ・ブリード(Best of Breed)をご紹介するオンラインセミナー(無料)を開催しますので、ぜひご参加ください。
 
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