こんにちは、SCSKの木澤です。
今年もAmbassadorアドベントカレンダーへ寄稿させていただきます(公開が1日遅れですみません)
ありがたいことに、今年もre:Inventに参加させていただきました。
今回は参加したキーノートやワークショップを通じて感じたAWSの戦略についてお話ししたいと思います。
re:Invent 2025の参加体験
私はAWS Ambassadorに認定いただいていることもあり、今年もありがたく参加させていただきました。
なおre:Inventは規模が桁違いに大きく、セッションやアクティビティも多いので、イベントで満足感を得られるかどうかは各参加者の行動計画に委ねられることと感じています。私の過去の体験としてはこんな感じで
- 2022
ブレイクアウトセッション中心
適当に予約したらバス移動が多くなってしまい、とにかく大変だった(圧倒された) - 2023
色々な種類にバランス良く参加し、比較的満足度は高かった
新サービスのセッション!と思って意気揚々と参加したら全然参加者がいなかったこともあった - 2024
ワークショップに多くに登録
手は動かして特定サービスの理解は深まったが、自社フィードバックの観点では微妙
今年は過去の体験を踏まえ、キーノートとワークショップ、EXPO巡回を中心に若干余裕を持ったスケジュールで計画しましたが、過去と比較しても満足感は高かったですね。
本イベントに参加する意義や感じ方は人それぞれかと思いますが、私としてはしっかりキーノートでトレンドを抑える、それとワークショップで新サービス中心に手を動かすことに価値があるのではないかというのが結論です。
なお、今年のre:Inventのレポートは、同行者の蛭田さんから多く発信いただきました。
現地の雰囲気を良く伝えられているかと思いますので、ご紹介いたします。
AI革命進行中
さて、re:Invent 2025の話に入る前に現在のトレンドから触れたいと思います。
現在、AI革命がもの凄い速度で進行中ですね。
私がIT業界に入って四半世紀過ぎましたが、これほどの激動を感じたことはありません。
なお約30年前にはインターネット革命がありました。
現在のIT覇権を握る企業には、その頃に起業された方々も多いです。
- Amazon 1994創業
- Google 1998創業
- (国内)楽天 1997創業
AI革命によって、今後数十年の覇権を握る企業が現われるのでは?
と投資家が思ってマネーが渦巻いている…というのが現在の状況と認識しています。
AIにおける業界構造
現在のAI革命におけるステイクホルダーとしては、このように整理するとわかりやすいかと思います。
- 半導体チップメーカー(nVIDIA社など)
- クラウド基盤提供ベンダー(AWSなど)
- AIモデル提供ベンダー(Anthropicなど)
- それらを用いて開発する開発者、ビルダー
現在のトレンドとして、あいにく 1.チップメーカーに富(利益)が集中する歪な状況 になっています。
データセンターは電力確保の争奪戦
急速なAI利用拡大に伴い、全世界的にデータセンターが不足する状況になっています。
特にAI利用においては多くの電力を消費するGPU等を大量に利用しますので、電力消費が莫大となります。
以下ガートナー社のレポートのリンクを掲載しますが、2030年までに電力需要は2倍に達する予想となっています。
米国では盛んな電力需要に応えるため、原発の新設などが計画されています。
参考:Gartner、データセンターの電力需要は2025年に16%増加し、2030年までに2倍になるとの予測を発表
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20251119-dc
私が思う印象的なスライド
AI基盤のアップデート
Matt Garman CTOのキーノートでは、冒頭多めの時間をとって、新しいAI学習用チップであるTrainium3プロセッサと、それを144基搭載したTrn3 UltraServersの発表がありました。
なぜ、主にインフラ担当のPeter DeSantisのキーノートでなく、Matt CEOのキーノートで採りあげるのか、とお感じの方もいるかもしれませんが、やはりAIモデルの開発ベンダー等、大規模利用顧客へのメッセージがあるのかと思います。
推しは電力効率(コスパ)
Trainium3プロセッサと、それを144基搭載したTrn3 UltraServersの特徴を挙げますと
- Trainium3プロセッサ
- 性能2倍
- 電力効率4倍
- 推論にも利用可能
- EC2 Trn3 UltraServers
- 性能4.4倍
- メガワットあたりのトークン数5倍
敢えて電力効率を推しているあたりで、AWSとしての推しは「コスパ」なんだろうと推察します。
今後電力が逼迫することが予想される状況においては、より低消費電力で動作するAIサーバの需要が高まるという予測もあるのかと思います。
余談になりますが、1ラックにこれだけ詰めて凄いですね。従来型のIAサーバーでもここまで詰めたら熱で異常が起こりそうです。ASICベースのTrainiumプロセッサだからこそできる芸当なのか、と思うとワクワクします。
AIエージェント関連機能の拡充
Amazon Bedrock AgentCoreは、現在AWSイチオシのサービスと言って差し支えないかと思います。
今年7月の発表、10月のGA以降、急激に利用拡大が進んでいると聞いています。
今回re:Invent中の各種発表の中でも、AWSはAIエージェントを動かす環境として最適な基盤だというメッセージが多く含まれていたのが印象的でした。
主なAIエージェント関連のアップデートは以下となります。
- AIエージェントの統制
- Policy in Amazon Bedrock AgentCore AIエージェントの統制
- Amazon Bedrock AgentCore – Evaluations AIエージェントのオブザーバービリティ
- Frontier Agent群
- Kiro Autonomous Agent 自律的に課題解決し開発を推進するエージェント
- AWS Security Agent セキュリティ専門知識を持ったエージェント。セキュアな開発を促進
- AWS DevOps Agent 問題発生時に根本原因の特定し解決を支援するエージェント
今回のre:InventはAIエージェント一色と言っても過言でないプログラムとなっており、キーノートで発表されたアップデート以外にも多くのワークショップでAIエージェントの活用ユースケースについて触れたものがありました。
私が参加したワークショップの概要だけ書きますと…
[COP403-R] AIエージェントによるクラウド運用の自動化
障害時の一時切り分け、AIによる障害原因の分析、復旧までAIエージェント経由でやってもらうワークショップ。
- DNSホスト名をIPアドレスまたはインスタンスIDに解決するツール
- VPC Reachability Analyzer を活用してネットワークの問題を特定し修正するツール
- Amazon CloudWatch のログとメトリクスを取得するツール
これらのなツールをAIエージェントに与えることで、障害原因の分析と復旧まで行うことができた。
[PEX315] AWS AI を活用したインシデント対応によるインテリジェントなセキュリティ運用
SecurityHub⇒S3に保存したセキュリティログをAIエージェントに分析させるワークショップ。
自然言語を使ってAIエージェントに「重要な発見を教えて」「どう解決できるか」を指示することで、SecurityHubで発見されたポイントとそれに対応する解決手段を得ることができる。
また、「解決してください」と指示すると、エージェントが問題を解決してくれる。
このようなワークショップ(ハンズオン)がありました。
Amazon Bedrock AgentCoreの周辺機能拡充で「使い勝手の良い」AIエージェント開発環境を提供することや、具体的なAIエージェントのユースケースを伝えることで、より開発者(ビルダー)に、AWSのAIエージェント環境を使ってもらいたい!という意思を明確に感じることができました。
まとめ
ここまで、基盤側のアップデートと、AIエージェント環境拡充と両面の話をさせていただきました。
- AI基盤 : コスパの良いインフラ基盤を提供する
- AIエージェント : 使い勝手の良い機能を提供する
総合すると、AWSの戦略が見えてくると思います。
そして、AWSはエコシステムを提供することで引き続き、業界リーダーでありたい。
そんなメッセージを強く感じた今回の訪問でした。
おまけ
本内容については、2025/12/16に開催した JAWS-UG Sales #4のLTで発表させていただきました。
ご聴講いただいた皆様、ありがとうございました。



