こんにちは!SCSKの松浦です。
配属されてから日々の業務やGoogle Cloudの学習を通して、新しい知識を吸収する毎日に奮闘しています。
前回は、Google Cloudの「Agent Designer」を利用して、「新人向けIT・ビジネス用語学習エージェント」を作成した体験をご紹介しました。(まだ読まれていない方はぜひ前回の記事もご覧ください!)
前回の開発を通して、「Gemini Enterpriseって面白い!もっといろいろ触ってみたい」と意気込み、Gemini Enterpriseについての記事や公式ドキュメントを読んでいたのですが……ここである疑問が生まれました。
「……あれ? 普段GmailやGoogleドキュメントで見かけるGeminiと、前回触ったGemini Enterpriseって何が違うんだろう?」
「同じ『Gemini』という名前なのに、Google WorkspaceのGeminiとGoogle CloudのGemini Enterpriseはどう違うんだろう?」
そうです。「同じような名前のサービスがたくさんあってわからない!」ということになってしまったのです。
公式ドキュメントや記事で調査した結果、ようやく「動く場所も、見ているデータの規模もまったく違う別物なんだ!」とスッキリ理解することができました。
そこで今回は、「新入社員がGoogle Cloudを触ってみた」シリーズ第2弾として、過去の私と同じように疑問を抱えている方に向けて、「Google CloudのGemini Enterprise」と「Google WorkspaceのGemini」の根本的な違いや最新のライセンス周りについて、新人目線で分かりやすく整理してお届けします!
なぜ混乱するのか?
Google Cloudや生成AIについて調べ始めたとき、私が真っ先に頭を抱えたのが「名称のややこしさ」でした。
ネットや資料を見ていると、
- 「Gemini for Google Workspace」
- 「Gemini Business / Gemini Enterprise(アドオン)」
- 「Gemini Enterprise(Google Cloud)」
といった言葉が飛び交っています。「全部企業向けのGeminiでしょ? 何が違うの?」と思って詳しく調べてみたところ、混乱してしまう原因がわかりました。
実は、オフィスツール向けとクラウド基盤向けというまったく異なる2つの体系の中に、どちらも「Gemini Enterprise」という言葉が登場していた歴史があるのです。
GoogleのAIサービスは進化のスピードが非常に早く、過去数年でブランド名や提供形態がダイナミックに変わってきました。この「名前の移り変わり」を時系列で整理すると、なぜ今こんなに混乱しやすいのかがよく分かります。
■ Googleのビジネス向けAIの変遷
【これまでの名前と位置づけの流れ】 ◆ 2023年(Duet AI 時代) ・オフィス向け:『Duet AI for Google Workspace』 ・クラウド向け:『Duet AI for Google Cloud』 ※この頃はどちらも「Duet AI」という統一ブランドでした。 ◆ 2024年(Geminiへのリブランド期) ・オフィス向け:『Gemini for Google Workspace』 └ プラン名として「Gemini Business」と「Gemini Enterprise」が登場! ・クラウド向け:『Gemini for Google Cloud』 ◆ 2025年〜現在(プラットフォーム統合と標準化) ・オフィス向け:Google Workspaceの主要プランに標準搭載される形へ統合 ・クラウド向け:全社エージェント・横断検索基盤として『Gemini Enterprise』が正式登場!
このように、
- かつてGoogle Workspaceの「有料アドオンプランの名前」として『Gemini Enterprise』が使われていた
- 現在、Google Cloudの「全社向けAIプラットフォーム製品の名前」として『Gemini Enterprise』が登場した
という歴史的な背景があります。そのため、ネット上の過去記事や解説ブログを読んでいると、この2つの時代の情報が混ざり合って大混乱が起きていたのです。
そもそも同じGeminiなの?
ここまで読んで、
「Google WorkspaceのGeminiとGemini Enterpriseは、そもそも別のAI(モデル)なの?」
と思った方もいるかもしれません。
どちらもGoogleのGeminiモデルを活用しており、そのものが別のAIというわけではありません。
違いはAIモデルそのものではなく、利用目的や利用環境、連携できるデータの範囲にあります。
Google Workspaceに搭載されているGemini機能は、GmailやGoogleドキュメント、Google Meetなどで日々の業務をサポートすることを目的としています。
一方で、Gemini Enterprise(Google Cloud)は、Google Workspaceだけでなく、JiraやSalesforce、Microsoft 365などさまざまなシステムと連携しながら、企業全体の情報活用やAIエージェントによる業務自動化を実現するためのプラットフォームです。
つまり、
- Google Workspace の Gemini = 個人の業務を支援するAIアシスタント
- Gemini Enterprise = 企業全体のAI活用を支えるプラットフォーム
という違いがあります。では実際に、どのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう!
根本的な違い:AIが動く場所と「見ている世界の広さ」
では、この2つは何が根本的に違うのでしょうか? 難しい専門用語を一旦置いておいて、直感的なイメージで整理してみました。
① Google Workspace の Gemini
イメージ:『デスクの隣に座ってくれる専属アシスタント』
- 動く場所:Gmail、Docs、Sheets、Slides、Meetなどの画面内
- 役割:日常のドキュメント作成やメール返信、会議のリアルタイム自動議事録作成をスムーズにする
- 見ている世界:主に「自分自身がアクセス権を持つGoogleドライブやメール」
② Gemini Enterprise(Google Cloud プラットフォーム)
イメージ:『会社中のすべてのシステムをつなぐAI司令塔』
- 動く場所:Gemini Enterprise Webポータルや Agent Platform 上。必要に応じてコネクタを利用し、Google Workspace、Microsoft 365、Jira、Salesforceなどのシステムと連携可能
- 役割:社内に散らばる膨大なデータを横断検索し、自律的に業務を実行するエージェントを構築・運用する
- 見ている世界:Googleドライブだけでなく、「Jira、Confluence、Salesforce、Slack、社内DB」など外部サービスとも連携可能(100種類以上のコネクタに対応)
「日常のオフィス作業を効率化する個人向けアシスタント」なのか、「会社全体のデータを束ねて業務を自動化するAI基盤」なのかという、AIの活躍するスケール感がまったく違っていたのです!
機能・ライセンスの徹底比較
機能面やライセンス体系の違いを表にまとめました。
| 比較項目 | Google Workspace の Gemini | Gemini Enterprise(Google Cloud) |
|---|---|---|
| 主な目的 | オフィスアプリ内での個人作業・共同作業の効率化 | 全社データ横断検索(RAG)、AIエージェント構築、業務自動化 |
| 提供形態 | Gmail、Docs、Meet等のサイドパネル・インラインUI、Gems | 独立Webポータル、Slack連携、API、Chrome拡張など |
| 連携できるデータ | ユーザー本人のGoogle Workspaceデータ(Drive, Gmail等) | Workspaceに加え、Jira, Confluence, Salesforce, Slack, 各種DBなどの外部サービス |
| エージェント機能 | Gems(プロンプトベースのカスタムチャットボット) | Agent Designer(外部ツール連携や自律アクションを含む本格エージェント構築) |
| 契約・ライセンス形態 | Google Workspace契約(主要プランに標準統合) | Google Cloudのサブスクリプション(月額シート課金+ストレージプール/従量課金) |
| 主なプラン(エディション) | Business Standard / Business Plus / Enterprise 各エディション等 | Business / Standard / Plus / Frontline / Pay-as-you-go |
| データ保護・セキュリティ | エンタープライズ保護(入力データはモデル学習に非利用) | エンタープライズ保護に加え、VPC-SC、CMEK、権限連動検索(ACL)など高度な統制 |
前回作った「学習エージェント」はどちらに位置づくの?
ここで前回の記事を振り返ってみます。
前回私は、Agent Designerを使って「新人向けIT・ビジネス用語学習エージェント」を作成しました。
当時は「エージェントが簡単に作れて便利だな」とだけ思っていましたが、今回違いを整理したことで、「前回のAgent DesignerはGoogle Cloud側の『Gemini Enterprise』の強力な機能の一部だったんだ!」と線が繋がりました。
単にチャットで定型文を返すだけでなく、将来的には社内Wiki(Confluenceなど)や社内データベースと連携させて、自社独自の業務ルールや最新ナレッジまで検索・回答できる高度なエージェントへ拡張できるのも、このGemini Enterpriseが持つプラットフォームとしての強みなんだと実感しました。
実際に調べてみて感じたこと(新人の気づき)
今回、2つのGeminiの違いを調べたことで、以下のような使い分けの基準がよく分かりました。
- Google Workspace の Gemini が向いている場面:
「メールの下書き作成やMeetの議事録自動作成など、日々のオフィスアプリでの作業をスムーズにしたい!」という場合。 - Gemini Enterprise(Google Cloud)が必要な場面:
「SlackやJira、社内DBなど、会社中のあらゆるシステムから一括でナレッジを探したい!」「社内システムと連携したオリジナルAIエージェントを作って業務を自動化したい!」という場合。
名前は似ていますが、「誰が」「どこで」「何のために」使うのかという目的をしっかり整理すれば、迷うことなく活用できるようになるのだと学びました。
最後に
今回は、新入社員がGoogle Cloudを勉強する中でぶつかった「Gemini Enterprise」と「Google WorkspaceのGemini」の違いについて解説しました。
最初は名前のややこしさに混乱しましたが、根本的な役割の違いを理解できたことで、Google Cloudの生成AIサービスの広がりと面白さをより一層感じることができました。
これからもGoogle Cloudや生成AIの機能に積極的に触れながら、学んだことを新入社員目線で発信していきたいと思います!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
