Kong連載第4回 生成AIの企業利用を安全に。マルチLLM時代を制する「Kong AI Gateway」の実力

こんにちは。SCSKの石田です。

Kong連載記事の第4回をお届けします。
前回の第3回では、インフラ運用の負担を劇的に軽減し、セキュアなハイブリッド環境を実現するSaaS型管理基盤「Kong Konnect」について解説しました。

今回は、そのKong Konnect上でも一際注目を集めている最新かつ強力な機能、「Kong AI Gateway」についてご紹介します。

昨今、多くの企業が業務効率化に向けて「生成AI(LLM)」の導入を進めていますが、本格的な商用利用や全社展開フェーズに入ると、インフラやセキュリティの担当者は新たな課題に直面します。今回は、それらの課題をAPIゲートウェイの層でどのように解決するのかを解説します。

 

企業における生成AI活用の「壁」

ChatGPT(OpenAI)やGemini(Google)をはじめとするLLMを自社のアプリケーションや社内システムに組み込む際、以下のようなガバナンスとセキュリティの課題が必ず浮上します。

  • APIキーの分散と漏洩リスク: 各アプリケーションが個別にLLMのAPIキーを保持してしまうと、認証情報の管理が煩雑になり、万が一の漏洩リスクが高まります。
  • ベンダーロックイン: 特定のLLMのAPI仕様に依存したコードを書いてしまうと、より安価で高性能な新しいLLMが登場した際に乗り換え(移行)が困難になります。
  • コストの肥大化(トークン管理): LLMの利用料金は送受信する「トークン数」に依存します。誰がどれだけ使っているのか把握できず、予算をオーバーするリスクがあります。
  • シャドーAIとセキュリティ監査: 従業員がどのようなプロンプト(機密情報を含む可能性のあるデータ)を送信しているか、中央で監査・統制する仕組みが不足しがちです。

これらの課題を個別のアプリケーション側で一つひとつ作り込んで解決するのは、開発コストやスピードの観点から現実的ではありません。

 

Kong AI Gatewayが提供する4つの解決策

そこで登場するのが、クライアント(社内アプリ等)とLLMプロバイダー(OpenAIなど)の間に配置する「Kong AI Gateway」です。AI向けに特化したトラフィック制御を行うことで、エンタープライズに求められる堅牢なAIインフラを即座に構築します。

具体的なメリットを4つご紹介します。

1. 認証情報(APIキー)の隠蔽と一元管理

Kong AI Gatewayを中継させることで、クライアントアプリケーションは各LLMのAPIキーを持つ必要がなくなります。
アプリケーションはKongに対してのみ認証(OIDCや社内共通のAPIキーなど)を行い、Kongが裏側でLLMプロバイダーの正規APIキーを付与してリクエストを転送します。これにより、機密性の高いクレデンシャル情報をゲートウェイ層で安全に一元管理できます。

 

2. マルチLLMのルーティングとロックイン排除

Kong AI Gatewayは、異なるLLM(OpenAI、Gemini、Claude、Cohereなど)の仕様差異を吸収する共通のインターフェースを提供します。
開発者はKongの標準フォーマットでリクエストを送るだけでよく、バックエンドのLLMを切り替える場合も、Kong側のルーティング設定(RouteとService)を変更するだけです。これにより、用途やコストに応じたマルチLLM戦略(適材適所のLLM利用)が容易になります。

 

3. トークン消費量の可視化とコスト統制(AI Rate Limiting)

従来のAPIゲートウェイにおける「リクエスト回数ごとの流量制限(Rate Limiting)」だけでなく、AIのコスト構造に合わせた「トークン数に基づく流量制限(AI Rate Limiting Advanced)」が可能です。
「このチーム(Consumer)は1ヶ月で100万トークンまで」といった厳密なコストコントロールを実現し、予期せぬ請求の肥大化を防ぎます。

 

4. プロンプトの監査とガバナンス強化(AI Prompt Decorator等)

送信されるプロンプトに対して、自動的にシステムのルールを付与(例:「あなたはSCSKの社内アシスタントです。社外秘の情報は回答しないでください」といったシステムプロンプトの強制挿入)するAI Prompt Decorator機能などを提供します。
また、リクエストとレスポンスのログを収集・分析基盤へ連携することで、利用状況の監査が可能になり、エンタープライズグレードのAIガバナンスを確立します。

 

Kong KonnectでAIトラフィックも統合管理

これらの強力なAI Gateway機能は、前回ご紹介した「Kong Konnect」の直感的なGUIから数クリックで設定・適用することが可能です。AzureやAWSなど、昨今のパブリッククラウドでもここでご紹介した機能を実現することは可能ですが、Kongではそれらと比べクイックに実装できるため、構築、運用保守の観点で優位性があります。

既存のAPIトラフィック(RESTやGraphQL等)を管理しているのと同じプラットフォーム、同じ操作感で、AIトラフィックの保護と可視化をシームレスに追加できる点は、Kongを商用利用する上での圧倒的なアドバンテージです。インフラを複雑化させることなく、最先端のAIテクノロジーを安全に自社システムへ取り込むことができます。

 

まとめ:安全なAIインフラの構築はSCSKへ

今回は、企業が直面する生成AI導入の課題を解決する「Kong AI Gateway」について解説しました。

  • クライアントからAPIキーを隠蔽し、クレデンシャル管理を安全に一元化できる。
  • コードを書き換えることなく、複数のLLMを柔軟に切り替え・ルーティングできる。
  • トークン単位での流量制限により、AI利用コストの肥大化を防止できる。

生成AIの業務利用において、「とりあえず動く」状態から「全社で安全に・統制を効かせて運用できる」状態へ引き上げるためには、ゲートウェイ層でのアーキテクチャ設計が極めて重要です。

SCSKでは、Kongのエンタープライズ機能やKong Konnectをフル活用し、お客様の環境(AWSやAzure、社内ネットワーク)に最適な、セキュアなAI・API連携基盤の導入を支援しています。生成AIの本格導入に向けたインフラ設計やセキュリティ対策にお悩みの方は、ぜひ当社窓口までお気軽にご相談ください。

■お問い合わせ窓口:SCSK株式会社 Kong担当(kong-sales@scsk.jp
当社のKong紹介ページでも情報をご案内しております。

さて次回は、今回ご紹介した「Kong AI Gateway」の機能をさらに深掘りする内容をお届けします。マルチLLMのルーティングやプロンプトの統制をどうやって実現するのか、具体的な「AI系プラグイン(AI Proxyなど)」の活用法に迫ります。どうぞお楽しみに!

著者について

AWSを中心としたサーバレスなアーキテクチャの構築と、その上で動作するアプリの開発をするチームにいます。アジャイル、DevOpsのスタイルが好きです。
昨年はKongと生成AIの面白さに気付きました。

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