CatoクラウドのIPv6対応の構成パターン(2026年8月版)


本記事は 夏休みクラウド自由研究2026 8/29付の記事です

Catoクラウドでは、今年3月にSocketによるPoP接続がIPv6対応したというアップデートがありました。

CatoクラウドのIPv6対応どこまで進んだ?
CatoクラウドのIPv6対応がいよいよ本格化します。SCSKとCato社の共同検証の内容とIPv6対応のいまをご紹介します。

ただ、背景にある文脈や技術情報を正しく理解しないと何がどうIPv6対応されたのか分かりづらい部分があります。
そこで、本記事ではCatoクラウドのIPv6対応の現状を整理し、わかりやすく説明したいと思います。

アンダーレイネットワークとオーバーレイネットワーク

まず、CatoクラウドのようなインターネットVPNでは、2つのネットワークを分けて捉える必要があります。

アンダーレイネットワーク

インターネットVPNのパケット自体を運ぶネットワークのことです。
Catoでは、SocketやCato ClientなどがPoPとの間で確立する暗号化トンネルのパケットを送受信するネットワークを指します。
アンダーレイのパケットはオーバーレイのパケットを内包しています。

オーバーレイネットワーク

インターネットVPN上に構築した仮想的なネットワークのことです。
Catoでは、PoPを経由したインターネットやWAN(他サイトやCato Clientなど)と通信するネットワークのことを指します。

雑な言い方をすると、Catoに繋ぐときに意識するのはアンダーレイで、繋いだ後に意識するのはオーバーレイと言えます。

2026年8月現在、CatoクラウドでIPv6を利用できるのは アンダーレイの通信の一部だけ です。
現状はオーバーレイの通信ではIPv6を利用できません。

CatoがオーバーレイのIPv6に対応するには相当な労力が必要になるはずで、その割に利用者側のメリットが大きいわけでもないため、現状で利用できないのは仕方がないものと考えています。
私はIPv6推進派でもあるため、利用できるようになることを小さく願っていますが。

以降はアンダーレイネットワークでIPv6を利用する話に絞って記述します。

アンダーレイネットワークのIPv6対応の構成パターン

アンダーレイの通信の一部でIPv6を利用できるのですが、そのことを説明する前に1つ明確にしておくことがあります。

それは、CatoクラウドのPoPはグローバルIPv6アドレスを持っておらず、PoPにはIPv4インターネットからのみ接続できる ということです。

このことはドキュメントに明記されているわけではありませんが、複数のドキュメントからそのように読み取れます。

つまり、PoPへの接続にIPv6を利用するということは、IPv6回線を用いたIPv4インターネット接続を利用する ということに他なりません。
これが多くの方を混乱させる部分でもあります。

そこで具体的な構成例を挙げつつ、詳しく説明していきます。

1. SocketによるPoP接続(ルータ設置)

ルータでIPv6回線を収容し、それを利用したIPv4インターネット経由でPoPに接続する構成です。
これは当初から利用可能な構成です。

有線回線だとIPv6 IPoE回線を用いたIPv4 over IPv6接続を利用するケースに相当します。
ルータにてIPv4通信のパケットがIPv6でカプセル化され、ISP内のBRやAFTRと呼ばれる役割の機器にてデカプセル化されてIPv4インターネットに繋がります。
IPv4 over IPv6接続にはDS-LiteやMAP-Eなど複数の方式がありますが、IPv4インターネットに接続できさえすれば方式を問わず利用できます。

NTTドコモのhome 5GのようなIPv6シングルスタックで提供されるモバイル回線ベースのホームルータを利用する場合もこの構成に該当します。
モバイル回線ではIPv4 over IPv6ではなくNAT64や464XLATといった技術が利用されます。
ホームルータなどの機器にてIPv4通信のパケットがIPv6に変換され、ISP内のPLATと呼ばれる役割の機器にてIPv4に変換されてIPv4インターネットに繋がります。

どちらの場合も、SocketとしてはPoPとIPv4で通信を行っており、その通信経路の一部の区間(ルータとISPの間)でIPv6が利用されていたとしても、そのことを知る由もない立場です。

このような回線の利用はCatoでは明確にはサポートされていません。
ただし、これは回線を利用できないという意味ではなく、回線でインターネットに接続する部分がCatoの責任範囲外であるということを指しています。
利用者側で回線を用意してIPv4インターネットへの疎通性を確保しさえすれば、PoPへの接続に利用できます。

2. SocketによるPoP接続(ルータ非設置)

ルータを設置せずにSocketでIPv6回線を収容し、IPv4 over IPv6接続もSocketで行ってPoPに接続する構成です。

この構成は2026年3月にサポートされたものであり、概要やSocketの設定方法はナレッジベースの以下ページに記載されています。

IPIP6 Static、IPIP6 Auto、IPv6 DS-Liteの3つの方式が挙げられていますが、これらはIPv6アドレスの割り当て方法とグローバルIPv4アドレスを専用で使うか他者と共有するかが異なります。
いずれにせよSocketからPoPへのIPv4通信のパケットがIPv6でカプセル化され、ISP内のBRやAFTRと呼ばれる役割の機器にてデカプセル化されて、最終的にPoPにIPv4で繋がるという点は共通です。

日本の一般的な有線回線では、IPv6 IPoE回線のうち、DS-Liteまたは専用のグローバルIPv4アドレスの割り当てを受けてIPv4インターネットに接続できる回線でこの構成を利用できます。
ルータを設置しなくても済むというのがポイントです。

現時点ではSocketはMAP-E方式によるNATやカプセル化に対応していないため、MAP-E方式の回線を利用する場合は前項の構成のようにルータを設置する必要があります。

なお、SocketはIPv6 PPPoE回線にも対応していません。
少なくとも現時点の日本ではIPv6 PPPoE回線の上でIPv4 over IPv6によるインターネット接続を提供するISPは存在せず、PoPに接続するにはIPv4インターネット接続が必須であるため、IPv6 PPPoE回線はPoP接続に利用できません。

3. Cato ClientによるPoP接続(ルータ設置)

「SocketによるPoP接続(ルータ設置)」と同様の構成のルータ配下で接続する構成です。

Cato ClientはPoPにIPv4で接続し、その通信経路の一部の区間(ルータとISPの間)でIPv6が利用されているという形です。
Cato Clientは経路の途中でIPv6が利用されていることを知らないという立場です。

このような接続形態は多くの環境にて既に利用されているものと思います。
今はIPv6 IPoE回線上でIPv4インターネットに接続する方式が広まっていますので、IPv6のことを意識せずに利用していることでしょう。
IPv6シングルスタックのモバイル回線のホームルータを利用している場合もこの構成に該当します。

4. Cato ClientによるPoP接続(IPv6シングルスタック環境)

NAT64でIPv4インターネット接続が提供されているIPv6シングルスタック環境下で、Cato ClientがIPv6を用いてPoPに接続する構成です。

このようなIPv6シングルスタック環境は、通常はモバイル回線で提供されます。

この構成は2024年7月にサポートされたものであり、概要や要件はナレッジベースの以下ページに記載されています。

この構成では、端末にはIPv6アドレスが付与され、IPv4ではインターネットと通信できない環境が想定されています。
IPv4アドレスはグローバル・プライベート問わず全く付与されていないケースと、付与されていてもIPv4インターネットへの疎通性がないケースの両方がサポートされています。

端末にIPv4アドレスが付与されていない場合、Cato Clientは初めからIPv6でPoPへの接続を試みます。
端末にIPv4アドレスが付与されている場合は、Cato ClientはIPv4でPoPに接続しようとしますが、接続できないことがわかった後にIPv6で接続を試みます。

PoPはIPv6アドレスを持っていませんので、Cato ClientはNAT64で利用するプレフィックスを何らかの方法(おそらくRFC 7050に記載の方法)で取得し、PoPのIPv4アドレスをIPv6アドレスに合成します。
そうして得たPoPのIPv6アドレスに対してIPv6で通信し、ISP内のPLATと呼ばれる機能の機器にてIPv4に変換(NAT64)され、最終的にPoPにIPv4インターネット経由で接続されます。

注意点として、端末にIPv4アドレスが付与されていると、環境によってはPoPとの接続が確立するまでに時間がかかる場合があります。
ネットワーク側でIPv4インターネットへの疎通性がなく、ICMPエラーを返すこともなくパケットをドロップするような場合、Cato Clientはタイムアウトを待ってPoPに接続できないことを判断することになります。
その結果、IPv6による接続にフォールバックするまでに時間がかかってしまいます。
ただ、そのような端末の環境ではPoP接続以外でも問題が生じるはずですので、このような状況ほとんどないと思います。

なお、NTTドコモのモバイル回線はIPv6シングルスタックですが、NAT64と組み合わせて464XLATという技術も利用されており、この場合は次のような構成になります。

464XLATでは、端末にはIPv6アドレスと464XLAT用のIPv4アドレス(NTTドコモの場合は 192.0.0.2)が付与されます。
アプリケーション(今回の場合はCato Client)はIPv4で通信を開始し、端末のOSがIPv4通信をIPv6に変換し、ISP側で再びIPv4に変換してインターネットに繋がります。
IPv4⇒IPv6⇒IPv4の2度の変換がアプリケーションに対して透過的に行われていますので、Cato ClientはIPv4でPoPに接続しているものと認識しているはずです。

今後の期待

現状をつらつらと説明しましたが、CatoによるIPv6サポートはまだまだこれからです。
今後の対応について具体的なマイルストーンは公開されていませんが、サポート範囲は広がっていくものと思います。

私としては、PoPに対して直接IPv6で接続できるようになることを期待しています。
オーバーレイネットワークのIPv6対応と異なり、アンダーレイネットワークの完全IPv6化はCatoにとって決して難しいものではないでしょう。
また、IPv4 over IPv6やNAT64のようないわゆるIPv6移行技術から脱却することは、通信の品質を向上させるだけでなく、インターネット自体に良い影響を与えるものであると信じています。

オーバーレイネットワークのIPv6対応が行われると素晴らしいことではあるのですが、WAN接続においては設計面も運用面も検討すべきことが増えてしまいますので、あまり期待していません。
PoP経由のインターネットアクセスだけがIPv6でも行えるようになると非常に嬉しいですが、そんな都合の良いことはさすがに無理でしょうね。

通信系のエンジニアとしては今後のアップデートが楽しみです!

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