こんにちは!SCSK新人の佐子です。
先日、Snowflakeのイベントに参加する機会がありました。
しかし、その企業ごとの強みを聞く以前に、「そもそもSnowflakeって何ですか?」「AI Readyってどういう状態のことですか?」といった初歩的な質問ばかりしてしまいました…。 各ブースの説明員の皆さんはとても優しく丁寧に教えてくださったのですが、その優しさがありがたい反面、自分の知識不足が悔しくもありました。1日でも早くキャッチアップして、対等に議論できるようになりたい!と強く感じました。
今回のブログのテーマですが、自分でコマンドを1つずつ打ち込んでAIエージェントを作るのって、地味に大変じゃないですか?
手動でコマンドを打っているとエラーで止まり、そのエラーをAIに質問してもコンテキストがうまく伝わらず、解決までに何時間も溶かしてしまう……私自身、そんな苦い経験を何度もしてきました。
そこで今回は、「エージェントの作成からデプロイまでの手順を、すべてAIに丸投げしてみよう!」 という検証を行いました。
具体的には、
- AIコーディングツール:Antigravity
- CLI ツール:agents-cli
- デプロイ先:Google Cloud Agent Runtime
を組み合わせて、長文を要約するAgentをデプロイしてみました!
今回の検証で衝撃的だったのは、「プロンプトをたった1回投げただけ」で、プロジェクト作成、ロジック実装、評価、エラー発生時のログ調査や設定ファイルの修正、そしてデプロイまで、すべてのコマンド実行とファイル修正を Antigravity が自律的に進めてくれた点です。
本記事では、実際にどのような流れでエージェントが完成したのかまとめていきます。Antigravity などのAIコーディングツールを活用・検討されている方の参考になれば幸いです!
用語の確認
今回使った技術を解説します。
Agent Runtime とは
Google Cloud が提供する AI エージェント専用のフルマネージド実行環境です。
Cloud Run などでコンテナを運用する場合と異なり、Dockerfile やインフラ周りの管理が不要で、エージェントの実装に集中できます。エージェント間の連携規格である A2A(Agent-to-Agent)プロトコル も標準でサポートされています。

agents-cli とは
Google Cloud のエージェント開発キット(ADK: Agent Development Kit)向け公式 CLI ツールです。
- 雛形の生成: プロトタイプをコマンドで作成
- ローカルテスト & Eval: CLI からの対話テストや、LLM を用いた自動評価
- デプロイ支援: Agent Runtime や Cloud Run へのデプロイ構成を自動生成
Skillsとは
毎回同じ指示(「PR作成前に Prettier でチェックして」「デプロイ時はこの引数を付けて」など)をプロンプトで説明するのは非効率です。
Skills を導入することで、プロジェクトのルールや作業の手順書をフォルダに配置しておくだけで、AI が文脈を理解して自動的に読み込み・実行します。
agents-cli には、エージェント開発を支援する 7つの Skills が用意されています。Antigravityはこれらのスキルを読み込んでコマンドを実行します。
| スキル名 (SKILL.md) | 主な役割 |
|---|---|
google-agents-cli-workflow |
ADK 開発ライフサイクル全体の管理 |
google-agents-cli-scaffold |
プロジェクト作成(create / enhance)の実行 |
google-agents-cli-adk-code |
エージェントロジックやプロンプトの実装支援 |
google-agents-cli-deploy |
Agent Runtime / Cloud Run へのデプロイ実行 |
google-agents-cli-eval |
エージェント精度の自動評価(agents-cli eval) |
google-agents-cli-observability |
Cloud Trace / Cloud Logging の監視とログ調査 |
google-agents-cli-publish |
Gemini Enterprise へのエージェント公開 |
各スキルの立ち位置は以下の通りです。
今回はコアスキルとなるgoogle-agents-cli-workflowを紹介します。
google-agents-cli-workflow は、Google の Agent Development Kit (ADK) および agents-cli を用いて AI エージェントを開発する際のライフサイクル、行動規範、他のスキル間の連携をオーケストレーションするスキルです。
このスキルはメインの指示書である SKILL.md と 詳細なドキュメントを格納した references/ ディレクトリで構成されています。
google-agents-cli-workflow/ ├── SKILL.md # ワークフロー全体、8つの開発フェーズ、行動原則 └── references/ ├── brainstorming.md # Phase 0 用: ユーザーとの対話型要件定義プレイブック ├── spec-template.md # 要件定義書 (.agents-cli-spec.md) のテンプレート ├── commands.md # フェーズ別 agents-cli コマンドリファレンス ├── internals.md # CLI がラップしている低レイヤーコマンド(adk, ruff, terraform 等) ├── terminology.md # Vertex AI / GCP 製品名と CLI 引数のマッピング └── extension.md # agents-cli の独自拡張・コマンドオーバーライド手順
google-agents-cli-workflowではエージェント開発を以下の0~7のフェーズに分割し、各フェーズで参照すべきスキルとルールを定義しています。
| Phase | フェーズ名 | 連携スキル | 主な役割・ルール |
|---|---|---|---|
| 0 | Understand (理解・設計) | なし | コーディングをいきなり始めず、brainstorming.md に基づき1問1答でヒアリングを実施。仕様書 (.agents-cli-spec.md) を作成し、ユーザー承認を得るまで次へ進まない。 |
| 1 | Study Recipes (既存例の調査) | /google-agents-cli-adk-code |
検索・コード実行・セッション記憶・OAuth・A2Aなどの機能は、既存の ADK レシピカタログを事前に学習して流用する。 |
| 2 | Scaffold (雛形作成) | /google-agents-cli-scaffold |
agents-cli scaffold create または agents-cli scaffold enhance を使い、CI/CD・Terraform・Eval 基盤が含まれる標準構成を生成。 |
| 3 | Build & Implement (実装) | /google-agents-cli-adk-code |
app/ 配下を実装。スモークテストには agents-cli run “prompt” や agents-cli playground を使用する。 |
| 4 | Evaluate (評価) | /google-agents-cli-eval |
LLM の振る舞いを評価データセットと LLM-as-judge で繰り返し測定・チューニング。 |
| 5 | Deploy (デプロイ) | /google-agents-cli-deploy |
Agent Runtime / Cloud Run / GKE へのデプロイ。 |
| 6 | Publish (公開) | /google-agents-cli-publish |
必要に応じて Gemini Enterprise 等のプラットフォームにエージェントを登録。 |
| 7 | Observe (監視・運用) | /google-agents-cli-observability |
Cloud Trace、BigQuery、Cloud Logging を連携したテレメトリとログ収集。 |
実践:要約エージェントの構築からデプロイまで
今回作成したのは、日本語長文を3〜5行の箇条書きに要約するエージェント「summary-agent」です。
開発環境
- OS: Windows 11
- Python: 3.12
- Model: gemini-3.7-flash
Step 1: 人間が入力した指示(プロンプト)
事前に uv と agents-cli の初期セットアップのみ手動で行いました。
pip install uv
uv venv
.venv\Scripts\Activate.ps1
uvx google-agents-cli setup
agents-cli --version
# => agents-cli, version 1.5.0
環境が整ったあと、Antigravity に投げたプロンプトは以下です。
入力したプロンプト:
https://google.github.io/agents-cli/guide/quickstart-tutorial/ を参考に、 agents-cli を使ってテキスト要約エージェント「summary-agent」を新規作成してください。 【要件】 - 役割: 日本語の長文テキストを3〜5行程度の簡潔な箇条書きに要約するエージェント - テンプレート: prototype - モデル: gemini-3.7-flash - 開発に用いる agents-cli のスキル(google-agents-cli-workflow や scaffold 等)があれば随時教えてください。 【ステップ】 1. プロジェクト作成(Scaffold) 2. 実装とローカルテスト(app/agent.py の編集、agents-cli run による動作確認) 3. 評価(Eval)の作成と実行(tests/eval/datasets/ の作成と agents-cli eval run) 4. Agent Runtime へのデプロイ(enhance と deploy)
※ 私が入力したのはここまでです。
Note
私がチャットに入力したのは上記のプロンプト1回のみです。
ここから先に記載しているコマンドの実行、コードの編集、エラーログの確認、設定の書き換え、デプロイは、すべて Antigravity がターミナルを操作して自動で進めた内容になります。※ただし、安全のために「AIがコマンドを実行してよいか」の確認ダイアログが表示されるため、人間側で都度「承認(許可)」を行う必要があります。
プロンプトを受け取った Antigravity が関連スキルを読み込み、Implementation Plan を作成して作業を開始しています。
Step 2:プロジェクト作成(Scaffold)
Antigravity は google-agents-cli-scaffold スキルを使い、以下のコマンドをターミナルで実行して雛形を生成しました。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli create summary-agent --agent adk --prototype --agent-guidance-filename GEMINI.md -y
cd summary-agent
agents-cli install
対話プロンプトで止まらないよう自動で -y フラグを付けて実行し、依存パッケージのインストールまで完了させています。
Step 3:要約ロジックの実装とローカルテスト
要件に合わせて app/agent.py を編集します。
gemini-3.7-flash は Vertex AI 上でグローバルエンドポイント(locations/global)向けに提供されているため、ADK の設定で client_kwargs={"location": "global"} を付与したコードを Antigravity が生成しました。
# app/agent.py (Antigravity が生成・編集)
from google.adk.agents import Agent
from google.adk.apps import App
from google.adk.models import Gemini
from google.genai import types
MODEL = "gemini-3.7-flash"
SUMMARY_INSTRUCTION = """あなたは日本語の長文テキストを簡潔に要約する専門家エージェントです。
【要件】
1. ユーザーから与えられた日本語のテキストの内容を正確に理解し、主要な要点を「3〜5行の箇条書き」に要約してください。
2. 箇条書きは各項目「- 」で始め、1行につき1つの要点を簡潔明瞭に記述してください。
3. 項目数は必ず3行以上、5行以下に収めてください。
4. 挨拶、前置き(例:「承知いたしました。以下に要約します。」など)や結び(例:「以上です。」など)は一切出力せず、要約の箇条書きのみを出力してください。
5. 原文にない推測や虚偽の事実(ハルシネーション)は含めず、原文の事実に忠実であること。
"""
root_agent = Agent(
name="summary_agent",
model=Gemini(
model=MODEL,
client_kwargs={"location": "global"}, # Vertex AI のグローバルエンドポイントを指定
retry_options=types.HttpRetryOptions(attempts=3),
),
instruction=SUMMARY_INSTRUCTION,
tools=[],
)
app = App(
root_agent=root_agent,
name="app",
)
ファイルを保存後、そのままローカルテストコマンドが実行されました。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli run "次のテキストを要約してください:人工知能(AI)技術の急速な発展に伴い、ビジネス環境における自動化の取り組みが世界中で加速しています。特に大規模言語モデル(LLM)の台頭により、従来の定型業務の効率化だけでなく、文書作成、コード生成、データ分析といった知的作業の支援が可能になりました。しかしながら、AIの導入にはデータの安全性確保やプライバシー保護、ハルシネーション(もっともらしい嘘)への対策など、多くの課題も伴います。企業がAIを活用して競争力を高めるためには、技術的な検証と同時に適切なガバナンス体制の構築が不可欠です。"
出力結果:
- 人工知能の発展により、定型業務から知的作業までビジネスの自動化が急速に進展している。
- LLMの活用は文書作成やデータ分析などを支援し、業務効率の大幅な向上を可能にした。
- 一方で、データセキュリティ、プライバシー保護、ハルシネーションなどの課題も顕在化している。
- 企業が成果を上げるには、技術検証とともに適切なガバナンス体制の確立が不可欠である。
指示通り、4行の箇条書きで綺麗に要約が出力されました。
Step 4:評価データセットの作成と自動テスト
次に、エージェントの出力品質を評価します。
Antigravity がテスト用データセット(tests/eval/datasets/summary-dataset.json)を自前で作成し、eval run を実行しました。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli eval run
agents-cli eval run の実行結果
Gemini による自動判定が走り、行数制約や要約の正確性について 全3ケースすべてで満点(5.00 / 5.00 点) となりました。
Step 5:Agent Runtime に向けた拡張(Enhance)
ローカルでの確認が取れたので、Agent Runtime へのデプロイ構成を適用します。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli scaffold enhance --deployment-target agent_runtime -y
agents-cli install
Agent Runtime 向け構成の追加とパッケージ同期
FastAPI アプリや Dockerfile など、Reasoning Engine に必要なファイル群が自動でプロジェクトに追加され、依存パッケージが同期されました。
Step 6:デプロイ実行とトラブルシューティング
準備ができたので、クラウドへデプロイします。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli deploy --project <YOUR_PROJECT_ID>
Cloud Build でのコンテナイメージ作成は成功したものの、Reasoning Engine のインスタンス起動で以下のエラーが発生しました。
agents-cli v1.5.0
Error: Deployment failed: {'code': 3, 'message': 'Reasoning Engine resource [projects/<PROJECT_NUMBER>/locations/us-east1/reasoningEngines/<REASONING_ENGINE_ID>] failed to start and cannot serve traffic.'}
エラーが出ても Antigravity は自分でログを調べ始めました。
- Cloud Logging の確認:
Antigravity がgcloud logging readを使って Reasoning Engine のログを取得。デフォルト設定のus-east1でコンテナのヘルスチェック起動がタイムアウトしていることを確認。 - リージョン設定の修正:
Vertex AI Agent Engine の推奨リージョンがus-central1であるため、設定ファイルを修正。agents-cli-manifest.yamlのregionをus-central1に書き換え.envのGOOGLE_CLOUD_LOCATIONをus-central1に書き換え
- 再デプロイ:
ファイルを保存したあと、再デプロイを実行。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli deploy --project <YOUR_PROJECT_ID> --region us-central1
数分後、無事にデプロイが完了しました。
✅ Deployment successful!
🪪 Agent Card URL: https://us-central1-aiplatform.googleapis.com/reasoningEngines/v1/projects/<PROJECT_NUMBER>/locations/us-central1/reasoningEngines/<REASONING_ENGINE_ID>/api/a2a/app/.well-known/agent-card.json
Agent Runtime ID: projects/<PROJECT_NUMBER>/locations/us-central1/reasoningEngines/<REASONING_ENGINE_ID>
Service Account: service-<PROJECT_NUMBER>@gcp-sa-aiplatform-re.iam.gserviceaccount.com
Reasoning Engine 自体は us-central1 で稼働し、モデル呼び出しはグローバルエンドポイントの gemini-3.7-flash へリクエストが飛ぶ構成になっています。
Step 7:リモート動作検証
デプロイ完了後、Antigravity はそのままクラウド上のエンドポイントに対して疎通テストを実行しました。
# Antigravity がターミナルで実行
agents-cli run --url https://us-central1-aiplatform.googleapis.com/reasoningEngines/v1/projects/<PROJECT_NUMBER>/locations/us-central1/reasoningEngines/<REASONING_ENGINE_ID>/api --mode adk "人工知能の発展により業務自動化が進んでいます。特にLLMの活用によりデータ分析や要約などの知的作業も自動化できるようになりました。しかし正確性の担保やセキュリティの確保が今後の課題です。この文章を要約してください。"
リモートからの出力結果:
Querying remote agent: https://us-central1-aiplatform.googleapis.com/.../api (mode: adk)
[summary_agent]: - 人工知能の発展により、業務の自動化が進んでいる。
- LLMの活用によって、データ分析や要約などの知的作業も自動化が可能となった。
- 正確性の担保やセキュリティの確保が今後の課題となっている。
Session: <SESSION_ID>
Resume with: agents-cli run "<message>" --session-id <SESSION_ID>
要件通り、前置きなしの3行箇条書きでクラウドから要約が返ってきました。
まとめ
今回は agents-cli と Antigravity を使って Agent Runtime に Agent をデプロイしてみました。
従来のAIアシスタントだと、ターミナルに出たエラー文をコピーしてチャットに貼り付け、「どう直せばいい?」と聞き直す……という、人が間に入ってコピペを繰り返す作業がストレスでした。ですが Antigravity は、エラーが起きても自分で Cloud Logging のログを見に行き、原因を突き止め、設定ファイルを書き換えて再デプロイまでやり切ってくれました。
また、AIがデプロイまで進めたのは、google-agents-cli-workflow などの Skills がしっかり効いていたからだと感じます。Google Cloud の推奨手順やルールが整っているからこそ成立するんだなと実感しました。手動でコマンドを打ってはエラーで何時間も溶かしていたことに比べると、人間側は最初の要件出しと実行承認のボタンを押すだけになり、開発のスピードが本当に早くなりました。こうしたツールを味方につけて、どんどん手を動かしながらキャッチアップしていきたいと思います!
Google Cloud のエージェント開発や、Antigravity などのAIコーディングツールの活用を考えている方の参考になれば嬉しいです。




