みなさん、こんにちは。 SCSKの石井です。
今回は、Deep Instinctの過去記事で取り上げられていたMicrosoft Officeのゼロデイ事例を、2026年の日本企業の実情に重ねて読み直してみたいと思います。
#ホント、書きたいネタが山ほどあって、違う意味で疲弊する、、(困)
色々掲載していっていますが、初心者向け、営業ネタ向け、技術向け、情報発信、等々、バラエティに投稿していこうと思いますので、全て見て欲しいですが
興味のある記事だけでいいんです! 要は最新の情報源とした内容をお届けできれば・・・(自身のモチベーション・・として💦)
さて今回の投稿ですが「2017年の脆弱性の話」について語ります。
ん? 今ごろ、2017年の話をいま取り上げる意味はあるのか?、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、文書ファイルを入口にした侵害、更新の遅れ、スクリプト実行、最終的なランサムウェアや情報窃取への接続という構図は、今見ても驚くほど古びていません。
むしろAIを悪用したフィッシングや、マルウェアレス侵害が現実のものになった2026年だからこそ、あらためて見直す価値があるテーマだと感じています。
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なぜ今、あえて古いOfficeゼロデイを振り返るのか
元記事で扱われているのは、2017年に修正されたMicrosoft Officeの脆弱性 CVE-2017-0199 です。MicrosoftのOLE2Linkオブジェクト処理に起因するリモートコード実行の問題で、細工されたRTF文書を開くことで、外部サーバーからコンテンツを取得し、.hta経由でスクリプト実行、そこから最終ペイロードへつながる攻撃フローが説明されています。当時はDridexによる悪用も報告されており、Office文書が業務の中に自然に入り込む“非常に扱いやすい攻撃入口”であることを印象づけた事例でした。
もちろん、この脆弱性そのものが今も未修正という話ではありません。Microsoftは当時パッチを公開しており、現在もJPCERT/CCやIPAは、Microsoft製品の月例更新について、任意コード実行を含む重大な影響が起こり得るとして、早期適用を継続的に呼びかけています。つまり2026年の読み替えポイントは、「このOffice脆弱性が今も危険」という一点ではなく、文書をきっかけに侵害が始まり、更新の遅れや設定不備が被害拡大につながる構図は、今も変わっていないというところにあります。
2026年の日本企業に引き寄せると、むしろ話はわかりやすくなる
日本の脅威動向を見ると、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、ランサム攻撃による被害が11年連続で1位、サプライチェーンや委託先を狙った攻撃が2位、AIの利用をめぐるサイバーリスクが初めて3位に入りました。さらに、システムの脆弱性を悪用した攻撃は4位、内部不正による情報漏えい等も継続的な脅威として挙がっています。
この順位を眺めると、Office文書を使った攻撃は決して単独の昔話ではありません。ランサムウェア、脆弱性悪用、AI悪用、委託先経由リスクといった、今の日本企業が向き合っている主要テーマの交点にあります。文書ファイルという一見ありふれた媒体が、依然として侵害の入口として成立しやすいのは、業務の自然な流れに紛れ込みやすいからです。
世界的な潮流も同じです。WEFのGlobal Cybersecurity Outlook 2026では、AIを最大の変化要因と見る回答が94%、AI関連脆弱性を最も急速に拡大するリスクと見る回答が87%、高いレジリエンスを持つ組織の78%がサプライチェーンと第三者依存を主要課題としています。攻撃の自動化や自然な文面生成が進むほど、文書起点の侵害は“古い手口”ではなく、“いまの技術で再強化された手口”として見た方がしっくりきます。
文書起点の侵害は、2026年にはより短く、より自然に見える
この数字を並べると、文書起点の侵害が怖い理由はかなり明確です。単に添付ファイルが危険だからではなく、その後ろにある展開速度、マルウェアレス化、ID悪用、設定不備の連鎖が非常に速いからです。攻撃の入口が“普通の業務連絡”に見えやすいほど、防御側は後手に回りやすくなります。
検知・対応中心だけでは苦しい局面が増えた理由
ここは少し丁寧に書きたいところです。EDRやXDR、SOCの価値が下がったわけではありません。侵害後の可視化、調査、封じ込め、復旧は、今後も間違いなく必要です。ただし、相手の初動が速くなり、しかもmalware-freeな手口が増えると、「侵入してから見つける」前提だけでは現場の負荷がかなり上がります。
とくに文書起点の侵害は、メール、ブラウザ、Office、スクリプト、ID、クラウドの境界をまたぎます。そのため、どこか一箇所だけを守る設計では吸収しにくい。
現場でよく感じるのは、攻撃そのものが特別に珍しいというより、ひとつひとつはよくある操作に見えるのに、つながると一気に危険度が上がるという点です。
だから2026年の論点は、「検知か予防か」という二者択一ではありません。むしろ、検知・対応の仕組みを活かしつつ、その手前に予防をどれだけ置けるかが現実的な設計論になります。元記事のDeep Instinctが、文書サンプル、.hta段階、最終ペイロードの各段階を止められる点を強調していたのも、この考え方と重なります。
図:事後検知中心と予防ファーストは、競合ではなく補完関係
| 観点 | 事後検知中心の役割 | 予防ファーストの役割 |
|---|---|---|
| 主戦場 | 侵入後の検知、調査、封じ込め、復旧 | 文書実行前、未知脅威、ペイロード展開前の前段抑止 |
| 強み | 何が起きたかを可視化し、封じ込めと復旧につなげやすい | 後続工程へ進む件数を減らし、SOC負荷や被害面積を抑えやすい |
| 向いている設計 | 「侵入は起こる」前提で迅速に収束させる | 「そもそも実行させない」を増やし、成立率を下げる |
| 2026年の現実解 | 更新管理、ID保護、メール対策、EDR/XDR、そして予防ファーストを重ねた多層構成 | |
日本企業の実務として、どこを見直すべきか
第一に、Microsoft製品の更新を「月例のルーティン」ではなく、事業継続に直結する基本統制として扱うことです。JPCERT/CCもIPAも、悪用時には任意コード実行や端末制御など重大な影響が起こり得るとして、更新プログラムの早期適用を継続的に呼びかけています。OfficeやWindowsのように利用者接点の広い製品は、更新の遅れがそのまま入口の広さになります。
第二に、文書ファイルの安全性をユーザー教育だけに寄せすぎないことです。教育はもちろん重要です。ただ、AIによる自然な文面生成や、社外とのデータ授受が当たり前になった環境では、人の注意だけで吸収しきるのは難しくなっています。入口での防御、実行前の遮断、IDと権限の見直し、脆弱性と設定不備の継続的な是正をまとめて回す必要があります。
第三に、未知脅威への向き合い方です。Deep Instinctの公式サイトでは、purpose-built deep learning frameworkを土台に、raw dataから学習し、cloud、NAS、applications、endpointsにまたがって、known / unknown threatsを実行前に防ぐ考え方が説明されています。
既存のEDR運用を活かしながら、未知の文書起点脅威に対する前段の防御を厚くするという見方をすると、かなり現実的な選択肢に見えてきます。
おわりに:Officeゼロデイの話は、2026年の企業防御そのものを映している
CVE-2017-0199そのものは過去の脆弱性です。ただ、そこから見える構図――文書を入口にした侵害、更新の遅れ、スクリプト実行を伴う多段攻撃、そして最終的な業務影響――は、2026年の日本企業にそのまま通じます。いまはそこに、AI悪用、malware-free化、ID弱点の悪用、サプライチェーン依存まで重なっている分、むしろ当時より防御設計は難しくなっています。
だからこそ、「またOfficeか」と片付けるのではなく、文書起点の侵害を多層防御の観点で見直すことが大切です。更新を速くする、入口を絞る、IDを見直す、そして実行前に止める層を前段へ置く。この積み重ねが、結果的に一番効きます。
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